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皆さん、こんにちは。
子育ては、「これでよいのか?」という不安と「この子はできるはずだ!」という期待の連続です。

この不安と期待が子どもへのまなざしを時に曇らせてしまうことがあります。

しかし、親の目を曇らせてしまうのは、不安と期待ばかりではありません。

ちょっと難しい言葉ですが、「同一視(どういつし)」という心のメカニズムがあります。

親の目を曇らせる「同一視」?

親側に、なかなか自信が持てなかったりした場合に「この子は本当に自信がなくて弱い子だ・・」と感じたり、過去に親が望んでいた職業を諦めるしかなく、その願望を未だに持っていた場合などに「この子は、きっと○○になりたいに違いない!」などと、自分の気持ちや願望と子どものそれが同じだと思い込んでしまうことがあります。

要は、親が思っていることが、あたかも子どもも同じことを思っているように感じてしまう心のメカニズム「同一視」と言います。

子どもに自分の似た面があればあるほど、この同一視は起きやすく、子ども本来の姿を見えにくくしてしまいます。

特に母親は、同性である娘を同一視しやすいのです。

女は損だ!何をやっても男にはかなわない!

同一視で一番よくないケースというのは、母親が自分自身を嫌いであったり、「女性であることは劣っていること」だと思っている場合ですね。

そういう母親が娘を同一視している場合、自己嫌悪感を娘に投げかけてしまうため、理由もなく娘に嫌悪感や軽蔑心を抱く事になります。

Bさんというある女性が、不登校になった娘さんと一緒に当相談室にやってこられました。このお母さんはピアニストとして活躍され、ピアノ教室も運営していました。

そんなお母さんが娘さんについてこう説明しました。

この子は、どうしてこんなに愚か者なんでしょう。成績も悪いし、友達もいないし、ピアノを練習させても、まったく集中力がないし、一向に上達しません」と。

学校の担任の先生に様子を聞いてみると、登校していたころは、成績も上位で友人関係も特に問題はなかったとのことでした。

私との面接でも、しっかりとした応答が出来ていました。

母親と話し合ううちに分かってきたことは、母親が実母からいつも「女は損だ!何をやっても男にはかなわない。男に頼って生きるしかない!」と言われ続けていたということでした。

実際、実母は不幸そうで、母親からするとそれがとてもイヤだったそうです。

娘の中にみえる自分の弱い部分?

そんな実母の姿を見て育った母親は子どもの頃から頑張って、ピアニストとして自立してきたのです。

彼女は自分の中にもある女性の弱い部分を、ずっと否定して見ないようにしていました。

それを自分の娘の中に見てしまったために、子どもの本来の姿が見えなくなり、「弱くて無能な子」と思えてしまったというわけです。

実は、「成績が振るわず、友人がいない」というのは、自分の子どもの頃の姿だったのです。

そして自分が不安を克服した「ピアノに必死に食らいつくという姿勢」が子どもに見えないことが不満だったのです。

母親が娘に抱いている「愚かで無能」というイメージが娘に投げかけられ(☚これを「投影」と言います)、そのイメージを子どもが取り入れて、「自分は愚かで無能だ」と思い込んでしまったというわけですね。

そのため、娘さんは心の底に深い自己不信を抱き、それが不登校につながったと考えられるのです。

心理面接を通して、お母さん自身がこのメカニズムを理解していくと共に、娘さんは徐々に元気になっていきました。

子どもは親とは独立した存在として受け入れる

自分の中にある嫌悪すべきものや認めたくない姿を勝手に子どもの中に見て、子どもも自分と同じだと思い込む、自分に欠けているものは子どもにも欠けていると思い込む、自分が期待することを子どもも期待していると思い込むといった同一視は、親が無意識のうちにしてしまっていることです。

親子関係では常に起きていることですから、同一視そのものが悪いということではなく、同一視した結果、子どもの本来の姿が見えなくなってしまうことが問題なのです。

もし我が子に対して、なんらかの嫌悪感や不安感を抱いていると思われたら、同一視をしているのではなかと自分を振り返ってみて下さい

同一視しているようなら、自分と子どもとで異なる点を見つけて欲しいと思います。

それが、結果的に「子どもは独立した存在」という意識を生んでくれると思います。

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