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eab15ee43ba87d9281c9516f8323b36d_s皆さんは、「パラドックス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

パラドックスとは日本語で「逆説的」という訳ですが、物事を逆から考えると違う結果が生まれてくるという意味です。

この「パラドックス」という概念は、そもそも家族療法ではじめて用いられた技法の一つなのです。

この技法は、表面上は症状なり問題なりを悪化する方向へあえて指示を与えることを意味します。

一体、どういうことなのでしょうか?簡単な例を挙げながら見ていくことにしましょう。

親に反抗を繰り返す高校生

e3239975fe55527e6f51d096282e26bb_s思春期を迎え、親に反抗を繰り返している高校1年生の息子さんの両親が相談室を訪れました。

話を聞いていくと、親の言うことに、ことごとく反抗しては、全く親の言い分に聞く耳を持たないと言います。

反抗期のお子さんを持つ親御さんなら一度は経験したことがありますね。

さて、この両親に対し、私が、息子さんに「もっと反抗しろ!」と命令するように指示を出したとしましょう。

早速、帰宅した両親は、息子さんに向かって「もっと反抗しろ!」と伝えました。

987eca87017b5f2fa265f89558d4724a_sすると、すぐに息子さんの反抗がおさまりました

一体、何が起こったのでしょうか?そのカラクリは以下の通りです。

両親の命令が、反抗している息子さんの耳に届いたとすると、届いた以上、この後も反抗を続けたとすれば、親の命令に従って「反抗している」ことになりますね(反抗しろ!という親の指示に従って反抗していることになります)。

反対にこの命令にも反抗すれば反抗をやめることになります(反抗しろ!という親の指示に従わなければ、反抗を辞めることになります)。

8fc7865283afe24e33f58a177ed6a547_s息子さんが、どちらの反応を取ったとしても「思うつぼ」というわけです。

要は、息子さんは「反抗しろ!」という親の命令に反抗したことで、反抗がおさまったというカラクリです。

もし反対に命令通りにしたとしたら、それは反抗をやめて命令に「従った」ことになりますね。

このようにパラドックス的な命令には、いつの間にか二重に縛り付けられてしまうことになるのです。

治療的パラドックス

625b882918afbfbc7b41984bc1ee617d_sでは、この概念を頭に入れて、ある有名な症例をご紹介します。

母親に伴われ「不安神経症」と診断された14歳少女のケースです。

彼女は面接場面で、足が激しく震えてしまうのです

足の震えを止めようと、両膝をくっつけてみたり、手で押さえてみたりしますが、震えはエスカレートするばかりです。

母親も、この足の震えを止めようと、娘の足に手を置きますが、足の震えはますますエスカレートします。

0a11264cada05ddfc5e1ac8a015056aa_sそこで、担当のセラピストは、「15秒間、出来るだけ速く、足をバタバタ動かしてごらん」と指示し、実際に時計で15秒計りました。

はい。15秒。もう止めていいよ」すると、少女の足の震えは止まってしまいました

「足が震えて止まらない」という少女に、「出来るだけ速く、足をバタバタ動かしてごらん」と逆説的な指示をすると、問題が解決してしまうのですね。

Heart-shaped glass marbles placed on leafパラドックスという視点は、子育てや夫婦関係などにも応用が利きます。

そのことについて今回は触れませんが、今後のコラムで分かりやすく解説していきたいと思います。

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