年齢に応じてできること
個人差はあるものの年齢によって発達の度合いは進んでいくので、その時期ごとに必要な環境やコミュニケーション、遊びなどを与えてあげることで、成長を手助けすることができます。
子どもは身体能力が発達するにつれてできることが増えていき、その能力に応じた課題にチャレンジすることで、喜怒哀楽の感情や達成感などを味わい、その結果として自己肯定感や忍耐力、相手への気遣いなどを身につけていくことができるようになります。
以下に、臨床心理学的視点から、年齢別にできる対応ポイントを挙げていますが、発達のスピードには個人差があり、一人ひとり性格も違うので、年齢や月齢などはあくまでも目安と考えてください。
1~1歳6か月
この時期は、まず規則正しい生活を送ることが大切です。まだ色々なことができなくて当然なので、できなくても、強く叱ったり強制することは控えてください。コップを持って飲む、着替えようとするなど、身辺自立のための基本的な動作も少しずつできるようになります。
子どもが嫌がらな程度にサポートし、うまくできれば一緒に喜び、失敗しても「よく頑張ったね」と健闘をたたえてチャレンジ精神を育ててあげて下さい。ただし、明らかに危険な欲求に対しては、「これは危ないからやめようね」などと伝えてください。
喜怒哀楽が見られるようになり、思い通りにならないと駄々をこねるなど自己主張も出てくるようになります。この時期は、まだ相手の都合に配慮したり、気持ちをうまく切り替えたりすることはできないので、親が違うものに注目させるなどして気持ちの切り替えを手伝ってあげてください。
友だちへの関心も高まりますが、自分の気持ちを伝えられないので、突然叩いたりかみついたりすることもあります。子ども同士のケンカを減らすには「やめなさい」としかる以上に、日頃から親が子どもの感情に「悲しいね。うれしいね」などの言葉で共感を伝えることが有効です。
1歳6か月~2歳
行動範囲が広がり、ほかの子どもと遊ぶようになりますが、同じ場所で同じ遊びをしているように見えても、まだ厳密には一緒に遊んでいるわけではなく、それぞれがひとり遊びをしている時期です。自分の物と他人の物の区別が分かり始めるので、順番を待つこともできるようになってきます。順番を待てたことや代わってあげたことなどに、その都度「よくできたね~」などと肯定的な言葉をかけてあげると、習慣として身につきやすくなります。また、意志がはっきりしてきて、自己主張することも増えてきますが、「Aにする?それともBにする?」という風に大人から選択肢を与えて少し待ってあげると、気持ちの切り替えがしやすくなるようです。
トイレトレーニングも少しずつ始められるので、タイミングをみてトイレに誘い、便器で用をたせたら「上手にできたね~」とよろこんであげます。着替えや靴を履くことなどを自分でしたがるので、着脱しやすいものを選んだり、しゃがむ・寄りかかるなどの安定しやすい姿勢を教えたりして、成功体験につながりやすい環境を整えてあげてください。
2~3歳
この時期になると、より自立心が強くなり、反抗的な言動が出てきます。その場で頭ごなしに否定するのでも言いなりになるのでもなく、自由に主張させて耳を傾けたり、選択肢を与えて選ばせたりしてあげるとよいようです。また、自分の思い通りにいかないことで癇癪を起すのもこの時期です。癇癪を起しているときに「癇癪はよくない」と説明しても通じません。必要以上に注目せず、気持ちが落ち着くのを待って、別のことを誘うようにします。まずは、子どもも親も落ち着くことが大切です。
そして親との関係だけでなく、兄弟姉妹や友だちとのかかわりの中でも、自分の意志を通そうとして衝突しやすい時期です。どの子にも正しい一面があると思うので、親に助けを求めてきたら、それぞれの言い分を受け止めて共感を示してあげると落ち着きを取り戻してきます。そのうえで相手方の主張を代弁するように伝えれば、自分はどうすればよかったかを落ち着いて考えやすくなります。
また、お手伝いもしたがるようになります。かえって時間がかかっても、なるべく「ありがとう。助かるよ」と受け入れてあげてください。信頼する大人の意志に沿いたくて、「食べていい?」などと行動前に確認することも増えていきます。「いいよ」や「だめ」だけでなく、「聞いてくれてうれしいよ」と伝えると、ますますよい習慣を身に着けてくれるようになります。
この時期は、わがままが強く出たり、親の意向とは反対の行動を繰り返すので、子どものマイナス面に目が行きがちですが、できる限り子どものプラス面(やろうとしたことや達成したことなど)に目を向けてあげるように心がけてみましょう。
3歳~4歳
自分で選択・実行する力をベースに、言動をコントロールする力が育ち、粘り強く頑張ったり、我慢したりすることも増えてきます。しかし、思うようにできない葛藤のために癇癪を起すこともあります。この時期の癇癪は、理想と現実に折り合いをつけるプロセスのようなものなので、強く叱ったり機嫌を取ったりするなどの過剰な反応をせずに待ってあげると落ち着きやすくなります。
また保育園や幼稚園に通う子どもが多くなり、ルールや約束を守りながら集団生活を送れるようになってきます。友達との遊びでは、「かして」「あとで」のような貸し借りや順番、交代などのコミュニケーションが言葉を介して行われるようになります。もちろん「かして」と頼んでも「イヤ」と断られる場面もあるはずです。その時は「いっしょにつかおうね」や「あとでかしてね」などの言葉があることも教えてあげられるといいですね。
それでも、まだまだ社会のルールが十分に身についていないので、人の物を持ち帰ってしまうなど、間違ったことをする場面もあります。その際には、激怒したり子どもの人格を否定したりせず、なぜよくなかったのか、今後はどうすればいのかをゆっくりと説明してあげしょう。失敗を繰り返しながら、色々なことを学習している真っ最中なのです。
4歳~5歳
言葉の理解力が高まるので、大人から説明される理由や事情を受け入れ、自分の行動を変化させることができ始めます。一方で納得がいかないと、怒りや不満を表現してくるはずです。この頃になると、大人や友だちの言動を参考に、自分の行動を調節・修正するようになります。ですから、親が感謝や謝罪をあらわす、時間や約束を守るなど、よいお手本となることが大切です。
またトイレや着替えなど、自分でやろうとすることが増えますが、やはり失敗も多く、失敗を通して様々なことを学習していきます。否定的な言葉や人格を傷つける言葉は使わず、引き続きチャレンジ精神を応援しながら見守ってあげることが大切です。さらに親を喜ばせたいと思うようになり、お手伝いを積極的にするようになります。ほどよい役割を与え、感謝の気持ちを伝えてあげてください。
ご近所さんに自分からあいさつをする、友だちが転んだり困っていたら手を貸してあげるなど、ルールとは言えないまでもできた方がいい社会的スキルやマナーも少しずつ教え始めます。一度にたくさんのことを求めすぎず、できなくても責めないように心がけましょう。
5歳~就学後
一日の予定をイメージして行動したり、時計を頼りに時間の区切りをつけたりすることもでき始めます。事前に一日の予定を伝えてあげると、自信を持って行動しやすくなり、また就学後の時間割のある生活への準備にもなると思います。そして小学校に入学すると、学校でのルールは先生から学んでいくことになるので、親にできることは「学校では、先生の言うことをよく聞こう」という大原則を教えてあげることだといえそうです。
また小学生になれば、友だちの家に遊びに行く、お小遣いを持って買い物に行くなど、子どもだけで行動することも増えてくるでしょう。普段から親がよいお手本を示すと同時に、あらかじめ少しずつ訪問や買い物などの日常生活のマナーを教えておくといいと思われます。さらに中学生になれば、正しい敬語の使い方や礼儀作法など、より大人に近い高度なマナーを習得できるようになるはずです。