皆さん、こんにちは。
私たち心理療法家の仕事は、基本的に人の話を聞かせていただくことが多いのですが、時に不安にかられてどうしようもない方に対して、その不安の中に一緒に身を置き、しばらく耐えてもらう作業をおこなうことがあります。
この作業は、不安の強い人にとって、真っ暗闇の中で灯りを消して、しばらく耐えることと同じ体験を意味しています。
当然、暗闇は怖いので、なかなか灯りを消せるものではありませんが、消したことでしか見えてこない光というものがあります。
子どもが不登校になった時
例えば、我が子が不登校になったとしましょう。
困り切った母親が学校に相談に行くと、担任から「過保護に育て過ぎたのが悪い」と言われてしまいました。
思い当たる節が多々あった母親は、「そうだ!その通りだ!」と思い、今までやっていた子どもの手取り足取りというような世話焼きを一切やめてしまいました。
ところが、子どもは学校に行かないどころか、余計に状態が悪くなってしまいました。
そこで他の人に相談してみると、「子どもが育っていくためには甘えが大切。子どもに思い切って甘えさせるといい」と言われました。困った時の神頼みで、とにかく言われたことをやってみましたが、どうにもこうにもうまくいかない。
「どうしていいのか分からない」というどん詰まり状態で、私たち専門家のところにやって来られるわけです。
灯りを消してこそ見える光
「過保護はいけない」、「甘えさせることが大切」などの考えは、それはそれなりに一理あって間違いだとは思いません。
しかし、それは目先を照らしている灯りのようなもので、このお母様にとって大切なことは、そのような目先の解決を焦って、灯りをあちらこちらにかかげて見るのではなく、とても勇気がいりますが、一度それを消して、闇の中で落ち着いて目を凝らしてみることなのです。
そうすると闇と思っていた中に、ボーっと光が見えてくるように、自分の心の深みから、「本当に自分の子どもが望んでいるのは、どのようなことなのか」、「一体子どもを愛するということはどんなことなのか」ということが、だんだんと分かってくるようになります。
そうなってくると、解決への糸口が見えてくるのです。
このように不安にかられて、それなりに灯りをもって、ウロウロする人に対して、灯りを消してしばらく闇に耐えてもらう仕事を共にするのが、私たち心理療法家の役割なのです。
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