皆さん、こんにちは。
曖昧な状態に耐えられる力、どっちともつかない曖昧な状態や答えが出ない状態でも、不安に振り回されず、落ち着いていられる力のことを心理学用語では「曖昧耐性(あいまいたいせい)」と言います。
もっと簡単に表現するとすれば「宙ぶらりん力」と言い換えることができます。
最近の子ども達を見ていると、この「宙ぶらりん力」が非常に弱い子が増えているように感じます。
別の言い方をすれば、「白黒をハッキリつけないと気が済まない」と考えている子がとても多いように思います。
実は、子ども達だけではなく、その親御さんにも多く見られる傾向でもあるのです。
例えば、人間関係で何かトラブルが起きると、その関係をすぐに断ってしまおうとする行為です。
中には、子ども同士のトラブルにも関わらず、親が勝手に首を突っ込み、問題を大げさにし、しまいには、子どもに「あの子はあなたとは合わないわ。あんな子とはもう別れなさい!」と言い放ち、無理矢理友だち関係に終止符を打ってしまう親御さんさえいます。
このようなお母さんの姿を見て育った子どもは、当然、「宙ぶらりん力」を育んでいくことができないので、人間関係で色々なトラブルを抱えていくことになるのです。
宙ぶらりん力が低いと・・
この「宙ぶらりん力」が低いと曖昧なことやどっちつかずの状態に耐えることができません。「白でなければ黒」「“好き”でないなら“嫌い”」といった二者択一的な考え方になりがちなのです。
しかし、この「二者択一的な考え方」は、自分の価値観や自分で決めた枠組みだけでものごとを判断してしまいやすく、自分とは違う考えを受け入れることができなくなってしまうのです。
要は、自分と同じ人は良いけど、自分とは違う人を受け入れられないので、排除しようとしてしまうんですね。いじめの心理には、こういった背景が隠れています。
例えば、恋愛場面を考えてみましょう。思いを寄せる人の態度が曖昧な時、自分の期待するような返答や対応がなかった時、宙ぶらりん力が低いと「私のこと『好き』じゃないんだ!」とすぐに思い込んでしまい、「好きじゃないなら『嫌い』なんだ」と悲しくなったり、落ち込んでしまうことがあります。
中には、傷つくことを恐れて、自分から離れて行ってしまう人もいます。でも、実は相手は、告白するタイミングを待っていただけなのかもしれません。
このように、宙ぶらりん力が低いと、すぐに自分の中で結論づけてしまい行動してしまうために、安定した人間関係が築けなくなってしまうことがあるのです。
宙ぶらりん力を高めるには?
曖昧さ、よく分からないことをそのまま受け止めて耐える能力こそが、「宙ぶらりん力」です。
そもそも結論が出ないとか、どうなるか分からないとか、そういうことは人間にとってはとても不安なわけですね。
その不安を、不安なまま耐える力が必要になってくるのです。
では、子育てを通して、我が子に「宙ぶらりん力」を身に着けてもらうためには、どうすればいいのでしょうか。
まず、親として子どもの「不安」と一緒にいてあげることです。
子どもが不安なことを訴えてきた時に、すぐに解決策を見つけ出そうとせず、まずは「不安なんだね」と気持ちを汲み取ってあげ、一緒に不安を共有してあげる体験が宙ぶらりん力を育てていく上で大切です。
この体験を繰り返していくと、誰かと一緒に「不安」という気持ちを共有していくことになるので、不安感への免疫が付いてきます。
要は、「不安はそんなに怖いものではない。不安はあってもいいんだな」という感覚が芽生えるのです。
この感覚が「宙ぶらりん力」を高めることにつながります。
また、答えが出ないことや曖昧でよく分からないことに対して、「時には時間が解決してくれることもある」ということを学習する必要があります。
その為には、今起きていることにすぐ結論を出してしまうのではなく、しばらく観察してみようとするスタンスが必要です。これは同時に、「待てる力」を育てるということでもあるんですね。
人はどうしても不安がイヤだから、白黒ハッキリさせたくなるものですが、ハッキリできなくても、その現実の中にじっと耐えている能力こそが、これからは求められてくるのではないでしょうか。
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