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皆さん、こんにちは。
子どもたちは、大きな夢を目をキラキラさせて語ってくれますね。
「大きくなったら、ヒーローになりたい!」
「ユーチューバーになりたい!」
「プリンセスになりたい!」
子どもの頃は「自分は何だってできるし、何にでもなれる」と信じています。
これは『幼児的万能感』と言って、子どもなら誰でも持っている当たり前の感覚です。
通常は、この幼児的万能感は大人になるにつれて、徐々に打ち砕かれていくのですが、中にはそれを持ち続けている大人もいます。
今回は、大人の幼児的万能感について考えてみたいと思います。
幼児的万能感とは?
文字通り、幼児的で(精神的に未熟で)万能である(自分は何でもできるすごい奴だ)と信じる心のことです。
幼いうちは自分や自分の家族や所有物に対して、ある程度誰もが持っている感覚です。
- 「自分は何でもできるんだ。」
- 「自分が一番かっこいい!」
- 「私が一番かわいい!」
- 「僕の家は特別だ」
- 「私の両親は立派な人間だ」
- 「お父さんとお母さんは何でもできて本当にすごい!」
この感覚は、乳児期に親が自分の望みをすべて叶えてくれたという安心感の名残でもあり、基本的信頼感がしっかりと育った証拠とも言えます。
また、この頃に身につけておきたい「根拠のない自信」にも通ずるものがあり、幼いころに幼児的万能感を持つことはとても大切なことです。
幼児的万能感は挫折することで打ち砕かれる!?
幼いころは大切だった幼児的万能感ですが、大人になっても同じように持ち続けていると厄介なことが起こってくるので、成長する過程で、打ち砕かれていく必要があります。
- 「俺よりすごい奴がいる」
- 「私よりよくできる人がいる」
- 「案外、自分はそんなにすごくなかったんだ・・・」
- 「上には、上がいるもんだ」
- 「どんなに頑張っても、できないことがあるんだ・・・」
- 「親なんて、意外と大したことないじゃん!」
それまでは「自分はすごい」と信じていたけど、成長する過程で、自分の限界を知り、ショックを受けたり、がっかりしたり、落ち込んだりする経験の中で、幼児的万能感は自然と打ち砕かれていきます。
人生のどのタイミングでどのような挫折体験が訪れるかは人それぞれです。
学生時代の失敗とか不登校やいじめ、受験、スポーツの限界などは分かりやすい例ですが、大人になってからの、うつや心身症などの「心を病む」という経験も挫折体験に含まれます。
中には、学生時代・社会人時代には全く問題がなかった人が、ママになった途端「産後うつ」になったりすることもありますが、これも心の成長に必要な挫折体験の一つです。
幼児的万能感が打ち砕かれることによって、自分の身の丈に合った新しい価値観を得ることができ、背伸びすることをやめて、より自分らしく生きていくことができるようになります。
人生における挫折や心が折れた経験は、一見するとつらく苦しいネガティブな存在のように見えますが、実は、その人の心を脱皮させて、大人の心へと導いてくれる大変貴重な経験なのです。
挫折したからと言って、自分をあきらめる必要は全くありません。
逆に考えると「挫折できた人はラッキー」と言えるかもしれませんね。
幼児的万能感が打ち破られないと・・
むしろ厄介なのは、挫折をしたことがなく、幼児的万能感を持ち続けたまま大人になるというケースです。
大人になっても、
- 「自分は何でもできるんだ」
- 「自分が一番かっこいい」
- 「私が一番かわいい」
- 「僕の家は特別だ」
- 「私の両親は立派な人間だ」
- 「お父さんとお母さんは何でもできて本当にすごい!」
と信じている人たちがいます。
幼児的万能感を持つ大人は、身体的には大人でも精神的にはとても幼くアンバランスで、いわゆる「Adult Children (こども大人)」のような状態です。
私の感覚では、昨今この「アダルトチルドレン」が急増しているように思います。
幼児的万能感を持つ大人の特徴としては;
- 感情のコントロールができない(TPOをわきまえず、すぐ怒る、泣く、わめく、大声で笑う)
- 「自分はできる」という幻想の中に生きている
- 自己肯定感が低く、プライドが高い(自分のことは嫌いだけど、プライドが高くそれを受け入れられない)
- 巧みに責任転嫁する(「自分は悪くない、悪いのは他の人」)
- 現実検討能力が低く、現状を受け入れられない(自分の能力にそぐわないポジションを望むが、能力が足りず不適合を起こす。その際は、自分の能力不足は認めず、すぐ人のせいにする。)
- 「自分は優れている」ので他人を見下す。誰かが何でも自分のためにやるのが当たり前だと思っている。
- あの手この手で相手をコントロールしようとする。
- 人が信じられない(自分以外はみんなゴミだと思っている。)
その結果、周囲の人たちからは煙たがられ、良好な人間関係を築くことが難しくなり、あらゆる関係が長続きせず、本人もしくは家族が疲弊し、苦しい思いをすることになりかねません。
そして、どんなに苦しくても、高いプライドが邪魔して、心から人を頼ることができません。
このような大人が親になると、いわゆる『モンスターペアレント』と呼ばれるようになり、その結果どのような子供が育つかは簡単に想像ができることだと思います。
なぜ幼児的万能感が打ち砕かれなかったのか?
ここまで来ると、次はなぜ幼児的万能感が打ち砕かれなかったのか?という疑問が沸いてくると思います。
それは簡単に言うと「親が子どもの挫折のチャンスを奪ってきたから」ですが、それにも大きく分けて2つの場合が考えられます。
一つ目は、親の抱える心の問題によって、虐待されたり、拒絶されたり、無視されたりして、幼児期に必要な関りが与えられなかった場合です。
また、母親が父親からDVを受けていたり、姑にいじめられているのを目の当たりにしてきたような場合も同じです。
このような場合、つらすぎる現実の中で生きてきた子どもは「自分が勉強を頑張れば、叩かれることはない」「私がしっかりしていれば、お母さんを守れる」という万能感を抱き、その幻想に縛られて生きていくことになります。
二つ目は、親の不安が強すぎて、先走って手を出し、口を出し、すべてをコントロールして過干しすぎたことにより、挫折が妨げられてきた場合です。
子どもはただ親が敷いたレールの上を走るだけで、途中で穴があったら親が埋め、危険な個所は親が安全にしてから通すというように育てられてきたので、何一つ自分でできないまま育ってしまいます。
「あなたは、親の言うことを聞いていればいいの。お母さん(お父さん)がすべて何とかしてあげるから」という具合です。
このような家庭では、いくら子どもが挫折のチャンスを作っても「子どもがつらい思いをするなんて、かわいそう」と親があらゆる手段でそれを阻止してきたので、子どもが困ることもなく、挫折をすることもなく、幼児的万能感が打ち砕かれることがありません。
しかし実際は、挫折を味わうことができなかったことが一番の不幸なのです。
どんなにかわいそうに見えても、子どもが悩むべきときにしっかりと悩ませる、失敗させる、挫折を経験させることも親の大事な仕事なのかもしれません。
いずれの場合も、実は、親自身が幼児的万能感から脱却できておらず、精神面が未成熟で幼いということなのですね。
幼児的万能感簡単チェック!
幼児的万能感から脱却できているかどうかは、その人と親との関係を見ればよく分かります。
親に対して抱いている万能感が自分の万能感の鏡のような役割をしているのです。
幼児的万能感から脱却できている人は、自分の親のことを客観的に見られるので、親を適度にいじったり、ダメ出ししたり、笑ったり、文句を言ったり、非難したり、否定したりすることができます。
- 「まったく、親のくせに全然ダメだな~」
- 「それでも親か?」
- 「お母さんって、ホント料理が下手だよね~」
- 「お父さんって、ホントすぐ怒るよね。どっかおかしいんじゃないの?」という具合です。
ここまで言えたら、ラクですよね。
どこかで自分(親)の限界を知り、「自分も親もダメなところもあるけど、いいところもある。まあ、そんなもんだろ」と思えます。
おやこ関係に「万能じゃなくても、無理しなくても、そのままの自分を受け入れてもらえる」という安心がある証拠です。
一方で、幼児的万能感から脱却できていない人は、自分の親も万能だという幻想の中にいるので、親のことを悪く言うことができません。
あくまでも、「親は万能」なのですね。
「父親は威厳のある立派な人格者で、母親は何でもやってくれる存在」のような幻想をずっと心の中に持っているのです。
そしてこの幻想をもとに、親に対して「それくらいできるだろう」「なんでそんなことができないの!」と無理な要求を突き付けてきたり「あなた万能なんでしょ!」と万能であることを求めてくるので、今度は親が疲弊していくのです。
そのまま行くと、本人も親も疲れ果ててしまい、関係が悪化するばかりです。
こういった方達が安定した関係を築けるようになるまでには、この幻想を打ち砕く作業が必要になってくるのですが、これが本当に難しいのです。
自分自身のこと、もしくは自分の子どものことを今のうちに一度振り返ってみてはいかがでしょうか?
何かに気づくことによって、現状はいくらでも変化します。
お困りの際は、是非おやこ心理相談室をご利用ください。できる限りお力になりたいと思います。
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