皆さん、こんにちは。
いつもおやこ心理相談室をご利用いただき、ありがとうございます。
最近の子ども達との関わりの中でよく思うのは、最近の子ども社会で生きていくことは大変な労力が必要だということです。
☘ ペルソナとは?
子どもたちは何種類かの仮面を持っていて、それを状況に応じて使い分けて生きています。
この仮面のことを心理学用語で「ペルソナ」と言い、他者に見せる外面的な人格のことを指します。
最近では、「キャラを使い分ける」という風に表現されることも多いですね。
状況に応じてペルソナを使い分けること自体は自然なことで、特に問題はなく、むしろ現代社会においては必要不可欠な能力とも言えるかもしれません。
クラスや学校で器用に生き残っていくためには、キャラの使い分けが必須と言っても間違いないでしょう。
☘ ペルソナの数が増えている?
ペルソナに関しては、あくまで一人ひとりが置かれた環境や状況に応じて複数の「顔」を使い分けるものなので、一人当たりの平均数という概念はありません。
しかし、最近は、子どもが持つペルソナ(キャラ)の使い分け方が複雑化しているように感じます。
家庭、学校、塾や習い事、といった場所や環境に合わせた使い分け方よりも、それぞれの場所の中でも一緒にいる相手に合わせた使い分け方が求められているように思えます。
例えば、学校においては、同じクラスの友達、違うクラスの友達、同じ部活動の友達、休み時間を一緒に過ごす友達、お弁当を一緒に食べる友達、教室を移動するときの友達などなど、細かく分類された相手に合わせたペルソナをかぶっているということです。
家庭においても同様に、お父さんといるとき、お母さんといるとき、両親一緒のとき、きょうだいといるとき、家族一緒のとき、おじいちゃん・おばあちゃん・親戚…という具合でペルソナを使い分けるのです。
学校と家庭以外の人間関係も同じです。
SNSで知り合った相手や、バイト先で知り合った相手など、子どもたちが出会う人間関係も複雑化しています。
しかも、子どもたちはこの使い分け方をごくごく自然に、当たり前にやっています。
☘ ペルソナを使い分けると…
複雑化したペルソナの使い分けの結果、何が起こるかというと、まずシンプルにものすごく疲れます。
ペルソナの使い分けというのは、要するに相手に合わせて自分を変えるというものなので、周囲を良く見て即座に判断しなければならず、とても気を遣う作業です。
それだけでも大変な疲労感なのですが、ペルソナを細かく使い分けている子どもたちは、それが当然なことなので、疲れているという感覚にすら気が付いていません。
もし、気が付いたとしても、「自分が疲れている」ということは受け入れられません。
そしてこの疲労感(認識あるなしに関わらず)が原因で、まず集中力に影響が出てきます。
その結果、以前より学業や部活動の成績の伸び悩みなどといった成績不振に直結します。
要するに、元気や気力が足りなくなってしまうのです。
☘ 本当の自分が分からない…
次に、相手に合わせて自分を変えることばかりやっていると、自分の素直な気持ちや感情を表現できなくなってしまいます。
相手に合わせてばかりで、自分の素直な気持ちを抑え続けていると、そのうち感情自体を感じることができなくなっていきます。
私が出会ったある子は、傍から見ると誰とでも仲良くできて、友達がたくさんいるように見えましたが、本音では、「自分はいつも人に合わせてその場を取り繕っているばかり。友達なんか一人もいない、誰とも友達になんてなりたくない。」と言っていました。
「ちょっと疲れているのかな?」と尋ねても、「いいえ、疲れてなんかいません」と答えていましたが、相手に合わせて自分を押し殺すことに、無意識で疲労感や違和感を覚え始めていたのだと思います。
こうやって周りに合わせて、無理をし続けていくと、本当の自分が分からなくなっていきます。
「本当の自分が分からない」と訴える学生・若者が今急激に増加しています。
本当の自分が分からないままでも、学生生活をうまくやり過ごし、社会に出ることはできます。
しかし、本当の自分が分からないと、人生の選択を迫られる様々な局面で、納得のいく決断ができず、後悔することになりかねません。
そのうえ、そのまま大人になると、その後の様々な人間関係でも苦労することになりかねません。
やりがいのある仕事を見つけ良好な職場環境を築いたり、好きな人と結婚し健全な家庭環境を築いたり、「自分らしく生きること・幸せに生きること」の裏側には、「自分を知る」という作業が必ず必要になってきます。
☘ 自分を知る作業
「自分を知る」ための最も手っ取り早い方法は、「自分の話をする・自分の話を聞いてもらう」ことです。
そして、本来その作業は膨大な時間をかけて行われています。
そうです。
本来その作業が行われるべき最も好ましい場所が「家庭」ですね。
通常は子どもが幼い頃から、何かにつけて訴えてくるたくさんの言葉を、親御さんは何となく、それとなく、聞いていますね。
その作業を、どんなに面倒でも毎日毎日行っていると、自然と子どもの中に、「自分はこういう風に考えて、こういう風に感じる人間なんだな。何が好きで何が嫌いで…。」という自覚が育ってくるのです。
この自覚がしっかりしてくると、どんなにペルソナを使い分けても、自分を見失うことはありませんし、そもそもペルソナを使い分ける必要性が無くなっていき、より自分らしく生きることができるようになるのです。
どんなに忙しくても、どんなに面倒でも、ご飯を食べながらでも、テレビを観ながらでも、ほんの少しの時間でも、子どもたちの話に耳を傾けることが、彼らの今後の人生を支える基礎となっていくのです。
自分が分からないと訴える人たちは、この「自分の話を聞いてもらう」経験が圧倒的に少ないという共通点があります。
子どもの話を聞くことは、今からでもできます。
子どもの話の聞き方のポイントについては、今後ペアレントスクールで詳しく解説していく予定です。
☘ 注意が必要!
複雑なペルソナ(キャラ)の使い分けが上手になるというのは、注意しておかないと「幸せ」と逆行している結果を生むようにも見えます。
しかし、その能力が今の学生たちに求められているということを考えると、よほど注意しておかないと危ないと思います。
ご家庭でも、是非このことに留意して、お子さんの様子をよく見て、話を聞いてあげてほしいと思います。
必要以上に無理をしていたり、勉強や部活で成績が大きく下がったり、いつも疲れている様子や、食事や睡眠時間の変化など、気になるところがあれば、一声かけてあげてください。
「気にかけているよ」というメッセージを常に発信しておいてください。
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