心の病を抱える人たちの中には、大なり小なり、何かしらのトラウマを抱えている方々がいます。
ちょっと難しい言葉で言うと「心的外傷後ストレス障害」という名前がついています。「PTSD」と呼ばれる場合もありますね。
トラウマを簡単に説明するとすれば、心の傷のことです。
ショックな出来事とか辛い出来事を体験すると、心にも傷が出来ることがあります。
心に軽い傷が出来た場合、その多くは自然と治っていきます。人間の心ってけっこうタフなところもあるので、軽いレベルのストレスやショックは、放っておけば自然と治ってしまいます。
防衛というメカニズムがあるので、何でもかんでもひどいダメージになってしまうわけじゃないんですね。
だけど、すごく深い傷を負った場合、後遺症が残るようなケガをした場合、傷あとや障害みたいなものがずっと残ってしまうこともあって、そういうのをトラウマって呼びます。
トラウマの症状って?
そのような深い傷やトラウマを受けるといろんな反応が生じてきます。
例えば、眠れなくなるとか、食欲がなくなるとか、漠然とした不安感や恐怖感が高まるとか、自分のやることは必ず失敗するとか、考えがネガティブ思考になったりします。
そんな症状が続いてくるので、結果的に日常生活に支障が出てきてしまうことがあります。
学校や仕事に行けなくなってしまったり、行動範囲がどんどん狭くなってしまいます。
「トラウマっていうのは、どうせ時間がたてば薄れて、そのうち忘れていくんでしょ?」という風に誤って捉えている人は結構いますね。
すごくつらいトラウマ経験はどんなに時間が経っても全然薄れていきません。
いじめられた記憶にしても、つい昨日の事みたいに感情を伴いながら語る人も結構いるものです。
「フラッシュバック」って聞いたことあるかもしれませんが、これなんかはトラウマが癒されていない証拠でもあるんですね。
これは心がその人の意図を超えて、そのトラウマ記憶を生々しくよみがえらせてしまうという症状で、トラウマ症状の一つなんです。
さっき傷跡って言いましたが、正確には、トラウマは、生傷がパックリ口をあけたままで全然傷跡にならない状態と考えてくれた方がいいかもしれません。
だから治療とかカウンセリングを全く受けていなければ、トラウマはずっと生々しいままなんですね。
トラウマはどうしたら癒えるのか?
じゃ~どうすればいいかという話になりますね。
私の経験上、トラウマケアには、まず安心できる場所で、信頼のおける人に、トラウマについて語ることが一番の近道だと言えます。
「思い出したくないことを、わざわざ話さなきゃいけないの?」と不思議に思われる方もいるかもしれませんが、これにはしっかりとした治療的効果があるんですね。
そもそも心の傷とか悩みは黙って貯めておくと水を吸ったように重くなってしまいますが、人に話すと、水が乾くように軽くなります。ぬれ落ち葉が乾いて、ちょっとしたそよ風に舞い散る枯葉の様なものなんですね。
生傷も風通し良くしておかないと、かさぶたになりません。
そして、過去のトラウマを語ることで、「記憶の上塗り」という効果も起こってきます。
どんなに生々しいトラウマ記憶であっても、その記憶を語った時の状況(部屋の雰囲気や温度、相手の表情や関係性など)が、トラウマ記憶に上塗りされるわけです。
要は、生々しいトラウマ記憶ではなくなり、「そういえばあの時、あんな場所でこんな人にこんなふうに話したな~」という新しい記憶がトラウマ記憶に上塗りされることになります。
これを何度も繰り返していくことがトラウマケアには必要な体験となってくるんです。
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- PTSD, トラウマ, 心的外傷後ストレス障害
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