皆さん、こんにちは。
いつもおやこ心理相談室をご利用いただき、ありがとうございます。
人は誰しもある程度は何か・誰かに依存しながら生きています。
それこそ生まれて間もない赤ちゃんはお母さんに依存していなければ生きていくことができません。
依存関係は健全な心を育てるうえで必要なものなのですが、過度の依存関係は時に不健全な関係を築いたり、「依存症」と呼ばれるような心の病に発展してしまうことがあります。
そして、大人の依存症に比べると、子どもの依存症というのは程度が軽いとみなされ、見過ごされている傾向にあるように感じます。
近年、子どもの依存症は増加傾向にあると言われ、実際、当相談室でも摂食障害や自傷行為・ゲーム依存など子どもの依存に関わるご相談は増えています。
言い換えると、何かに依存しなければならない程、生きづらさを抱えている子どもたちが増えているということになります。
このまま子どもの依存症が見逃されていくと、将来どのようなことになるかとても心配です。
今回は、『子どもの依存症とその心理』について解説し、増え続ける子どもの依存症に警鐘を鳴らしたいと思います。
子ども達が依存する3つの対象物
子ども達が依存する対象物は大きく分けて3つあります。
- 物質 (ドラッグ・薬・食べ物(摂食障害)・ブランド品など)
- プロセス (ネット・ゲーム・スマホ・SNS・買い物・万引き(クレプトマニア)・自傷行為(リストカットなど)・セックスなど)
- 人間関係 (親子の共依存(母子カプセル・家庭内暴力)・恋愛・推し(アニメやアイドルなど)など)
食べ物に依存している場合は、摂食障害に結びつきますし、親子関係の共依存は家庭内暴力などの問題に直接つながっていきます。
最近でいうと、2022年にゲーム依存が「ゲーム障害」として正式に病気認定されました。(「ゲーム依存症?WHOが病気認定」参照)
依存対象物に関わらず、「依存」という状態は、様々な心の問題を引き起こす可能性のあるものです。
依存症まではいかなくても、その予備軍の子どもたちも沢山いると思われます。
親御さん達には、是非今回のコラムを読んで、依存症の危険を知り、日頃から危機感を持って子ども達と接していただきたいと思います。
依存症を見極めるポイント!
何かに依存している時は、そのことしか考えられず、他のことが手につかないような状態です。
頭の中は常に対象物でいっぱいで、誰に何を言われようと全く頭に入ってきません。
依存症かどうかを見極めるポイントとしては、対象物が断たれた時に、禁断症状が出るかどうかで判断できます。
禁断症状とは、①パニック、②攻撃的になる、③身体症状(手のふるえ、発汗、落ち着きがなくなる等)などです。
日頃から、よく観察してみて下さい。
依存する子どもたちの心理
これらの子ども達に共通する特徴としては、甘え下手で人間関係が不器用、真面目で白黒発想が強く、プライドが高い優等生タイプが多いです。
そして、依存する子どもたちの心理を理解するうえで、二つのキーワードを知っておく必要があります。
代理欲求
幼少期に親に甘えられなかった経験があり、「本当は親に甘えたい」という依存欲求を代理の「物」で満たそうとする心理を「代理欲求」と言います。
本来は「親に甘えたい」という思いがあっても、プライドが高い為、この依存欲求を認められず、心の中から完全に排除して、自分一人で完璧にできるよう思い込み、振舞います。
要は、「自分は誰にも頼る必要のない、何でも一人でできる完璧な人間」という認識を持つということですね。
しかし、全てを一人で背負い込むと、現実はとても大変で疲れてきます。
ところが、依存症の方々の多くは、疲れているという意識はありません(認められません)が、無意識にこの辛い現実から逃れたいという気持ちが出てきます。
そこに、現実を忘れさせてくれるような刺激や快感をくれる対象物があらわれると、その対象物に異常に執着をするようになり、それによって排除してきた依存欲求を満たそうとしていきます。
二面性
依存が強い子ども達は、大抵の場合、二面性を持っています。
一つは、「いい子」の一面です。真面目で優秀な頑張り屋さんで、いつも無理をして頑張っている顔です。
二つ目は、依存対象物にのめり込む一面です。これは、日頃の「いい子」の反動といってもいいかもしれません。
この二面性が問題を隠す隠れみのとなり、周囲に問題を悟らせないようにします。
カウンセリングに来談しても、本人は問題意識がなく、「私は全然大丈夫ですから」と話をしようとしないことも珍しくありません。
大人の場合もそうですが、子どもの場合でも依存が関わってくると、本人に問題意識がなく、ウソや偽りでごまかすことも多いので、介入が難しいケースになってきます。
依存症のまま成長すると?
依存する心理の根底には、親に甘えられなかった寂しさや孤独感、親に対する怒りが隠れています。
それらを持ち続けていくと、怒りが憎しみへと変化していき、親子関係の修復はどんどん難しくなっていきます。
また、自分の話をありのまま聞いてもらったり、寂しさを理解してもらった経験が少ないので、他人(家族含む)が信用できなくなり、周囲が敵に見えてきて、被害者意識が強まっていくこともあります。
被害者意識が高いというのは、小学生くらいの子ども達にも増えてきている傾向です。
こういった子ども達は、実際には、そんなことはないのに「みんなが自分をバカにしてる・みんなに笑われてる・いつも自分ばっかり怒られる」などと訴えてきます。
問題を隠したまま、依存状態が改善せずに成長すると、日常生活に支障が出てきたり、自傷行為や自殺未遂などを繰り返すようになったり、お金のトラブルに発展したり、犯罪に手を染めたりと、究極のSOSを出し始めます。
その結果、病院か警察のどちらかのお世話になるようなことにもなりかねません。
ここまできて初めて親が危機感を持つという場合も多いのですが、残念ながらここまで来ると「時すでに遅し」という場合が多いです。
改善のポイント
繰り返しになりますが、依存する心理の根底には、親に甘えられなかった寂しさや孤独感、親に対する怒りがあります。
この寂しさや怒りを言葉で表現できるようになることが、改善のポイントになります。
依存物から強制的に距離を置くなどの対症療法もありますが、一時的に改善してもすぐ元に戻ってしまうのも依存症の特徴の一つです。
根本的にケアしていくには、根底にある感情を取り扱う必要があります。
それを可能にしている心理療法の一つが、精神分析的心理療法です(当相談室のメイン療法になります)。
依存症を抱える子ども達の多くは、親に対する様々な気持ちでいっぱいいっぱいなのですが、プライドが高すぎる為に、親にはそんなこと絶対に言えません。
また、寂しさや怒りでいっぱいの子ども達は、悪意ある周囲の大人たちに言葉巧みに利用されたり、容易に犯罪に巻き込まれたりする危険性もあります。
甘えていいはずの人に甘えられず、一番危険な人に助けを求めてしまうわけですね。なぜなら、うわべだけ見れば、一番危険な人が、一番優しそうに振る舞うからです。
そこで、気持ちを表現する相手として安全で信用できる第三者の介入が必要になってきます。
直接親に言えなくても、誰かにこの気持ちを伝えることができれば、大きな一歩になります。
専門家をもってしても、これらの子ども達が素直な感情を表現できるようになるまでには、相当の覚悟を持って粘り強く対応していく必要があります。
依存症に関しては、「様子を見て」だけでは改善はありません。
また、依存症は世代間連鎖を生みやすいと言われており、依存症の子どもの親御さんもまた依存症である場合も少なくありません。
当相談室では、子どものご相談に加え、親御さんご自身の相談にも対応しております。
お子様・ご自身の依存症にお気づきの方は、勇気がいることとは思いますが、早めに専門家へご相談ください。
何かに依存しなければならない、その寂しさを一つ一つ丁寧に扱っていきます。
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