皆さん、こんにちは。
いつもおやこ心理相談室をご利用いただき、ありがとうございます。
皆さんは、「我慢」と聞くと、どのようなイメージを持ちますか?
「我慢」とは「耐え忍ぶこと・こらえること・辛抱」という意味があり、苦しさ・つらさ・痛さ・寒さ・くやしさ・空腹などをこらえるという用法です。(Weblio辞書より)
一般的には、自分の欲求やわがままに対して、それをこらえることのような意味合いも含まれているように感じます。
もちろん、外の社会や他人がいる場所で、適切な行動を取るためにルールやマナーを守る為にある程度の我慢は必要ですが、自分の気持ちまでも我慢するクセがついてしまうとそれが大きな副産物を生み出してしまうかもしれません。
私はいつも我慢している!
私がこれまでに出会ってきた親御さんたち(特にお母さん)の多くに共通して、よく聞くフレーズが、「私はいつも我慢している」です。
- 私はこれまで家族のためにこんなに我慢してきた。
- 我慢ばかりしていて、自分のことはいつも後回し。
- 本当にやりたい仕事は我慢して、やりたくない仕事をしている。
- いつも他人に合わせて我慢している。
- 他の人の顔色ばかりうかがって、我慢して付き合っている…。
枚挙に暇がありません。
ここでいう「我慢」は自分の本当の気持ちややりたいこと・言いたいことに対する我慢です。
そうやって自分の気持ちを我慢することが当たり前になっている母親は、当たり前のように子どもたちに我慢することを強いてしまいます。
- (私はいつも我慢しているのだから)あなたもそれくらい我慢しなさい。
- あなたのためを思ってやっているのよ(私はいろいろ我慢して…)。
本来なら、子どもが何かを訴えた時に、なぜそう思うのかを問い、自分の気持ちを素直に表現する練習をさせてあげるといいのですが、我慢するのが精一杯で、子どもの気持ちを汲み取れるほど、心に余裕がない母親が増えている、ということなのかもしれません。
あれこれ指示することで、無意識に子どもに我慢を求めている裏側で、本当は自分の意見に自信がなく、不安で心細い思いを抱えていることが多いのです。
我慢している母親のもとで育つ子どもは…
そうやって育てられた子どもたちは、母親と同じように我慢することを良しとして頑張って我慢するようになります。
嫌なことがあっても、つらいことがあっても、理不尽な扱いを受けても、「これくらい我慢しなきゃ…」と我慢して耐えていきます。
そのうち、自分の気持ちを表現することまでも我慢するようになり、感情が鈍麻していき、何も感じなくなっていきます。
その結果、自分を大切にできない子どもが育ってしまうのです。
「自分を大切にする」ことが分からない?子ども達
我慢し続けていくと、自分の気持ちがわからなくなってきて、自分の価値もわからなくなってきます。
「自分は価値がないから、他人も価値がなくて当然」
「自分も他人も傷つけられるのは当然」
という発想が育ち、人を傷つけることに抵抗がなくなっていきます。
人を傷つけることを平気で言える人に「そんなことを言ったら、言われた人が悲しむよ」と伝えても、その感覚が分からないのです。
その結果、自分を傷つける自傷行為に走ったり、他人を傷つけるいじめに加担したりと様々な問題を起こし始めます。
高校生くらいから女の子なら自分の身体を商品としてお金を稼ぐようになったり、男の子なら人をだます詐欺や犯罪などに簡単に巻き込まれてしまうことにもなりかねません。
今問題視されている闇バイトやホスト依存も、そもそものスタート地点は「我慢のし過ぎ」ということなのかもしれません。
ここまで読めばご理解いただけるかと思いますが、「自分はいつも我慢している」と思っている親御さんからは、自分のことを大切にできる子どもは育ちにくいということです。
私はこのことこそが、行き過ぎた「我慢」の副産物のように思えてならないのです。
子どもの為だけを思って、これまでたくさん我慢し続けてきたのに、それが逆に、子ども達を苦しめる結果になっているかもしれないと聞いたら、とてもショッキングかもしれません。
我慢の反対側の価値を知る
「我慢」の反意語は「素直」(=ありのまま)です。
我慢ばかりしているということは、素直にありのままに生きることを否定していることになりますね。
自分を素直に表現するということは自分を大切にするということなので、我慢ばかりしていると、自分を大切にすることが難しくなっていきます。
人がありのまま自分らしく生きていくためには、「我慢」だけではなくて、「素直に苦しいと言えること」「人に助けを求められること」も身につける必要があるのではないでしょうか。
生きていくうえで、我慢と素直さのバランスが何より重要なのです。
自分を大切にする心は、母親から「ありのまま」を受け入れられて、無条件で愛された経験がなくては育ちません。
自分を大切にできないまま大人になると、「自分は母親よりも幸せになってはいけない」という人生脚本が出来上がってしまい、自分から幸せを避けるように生きていくことになります。(☞人生脚本参照)
しかも、自分に対して我慢ばかりしていると、その反動で外の社会においての我慢ができなくなり、反社会的な行動を取るようにもなりかねません。
犯罪を犯す心理の裏側には、幼い頃からの我慢の鬱積がみられることも少なくありません。(☞犯罪を犯す10代の共通点参照)
なんでもかんでも「ガマンガマン…」ではなく、必要な我慢としなくていい我慢の見極め方を身につけることが大切なのです。
世代間連鎖を断ち切る
ここで注意しておきたいのは、これが一概にすべて母親の責任というわけではないということです。
実は、母親自身も親や学校から「我慢は美徳」として教わってきた世代なので、自分に対しても我慢することが良いことだと思い込んでいる節があります。
そして、その我慢に対する認識が社会的な常識として広がり、世代間連鎖となっているのです。
一般的に美徳とされている「我慢」を手放し、この悪循環をどこかで断ち切ることが、最終的には親も子も幸せを掴むことにつながります。
今、どんなに苦しくても、我慢ばかりしているという方がいたら、その状況を変える第一歩は素直に助けを求めることです。
周りに誰もいないと感じる時は、是非、私たちに話を聞かせてください。
勇気がいることだというのは重々承知しております。
あなたの「助けて」を、一つ一つ丁寧にお聞きしたいと思います。
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