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皆さん、こんにちは。
いつもおやこ心理相談室をご利用いただき、ありがとうございます。

以前にもコラムで書いたことがあるテーマですが、「パラドックス」という言葉を覚えていますか?

パラドックスとは、矛盾・逆説という意味で、物事を逆から考えると違う結果が生まれてくるという概念です。

カウンセリングの中でも治療的パラドックスとして用いられることがありますが、日常生活や人間関係においても、とても役に立つ概念です。

今回は日常においてパラドックスを活用している例をいくつかご紹介したいと思います。

① ダイエットを続ける秘訣!?

先日、「どうしても物事が続かない」ということでご相談を受けました。
皆さんも、同じような経験があるのではないでしょうか?

例えば、ダイエットや運動などが代表例ですね。

「健康のために!」と思って始めてみたものの、「苦しい・つらい・めんどくさい」の壁が立ちはだかり、すぐに続かなくなってしまう…

中には、好きで始めた趣味や習い事なども続けることが難しい、という場合もありますね。

そして、続かないことで、自分は意志が弱いと思い込み自分はダメだと自己否定し、さらにチャレンジすることが難しくなってしまうという悪循環を引き起こしかねません

続かないのは、意志が弱いわけではなく、単純にそのタスクが難しすぎるのです。

そのタスクの難易度を落とすとか、より良い環境を準備するとか、いくつか打開策はある中で、今回はパラドックスを用いた思考を変えるアイデアを一つ提案させていただきます。

「食べることを制限して、運動をたくさんする」→「食べることを自由に、運動を制限する」という逆転のアイデアです。

具体的には、「食べることは自由に好きなものを食べてください。そして、運動は1日10回(簡単にできそうな範囲)だけに制限して下さい」という提案です。

「え?食べていいの?運動もそんなちょっとだけでいいの?」という声が聞こえてきそうですね。

ダイエットを始めると、「食べちゃダメ、運動しなきゃ」と思っているので、その強すぎる意識から、逆にその行動ができなくなってしまうことがあります。

「ダメ!」と言われるほどやりたくなる、「やれ!」と言われるほどやりたくなくなる心理です(これを、心理学用語で「心理的リアクタンス」といいます)。

ですから、「ダメ!」と「やれ!」をうまく反転させたというわけです。

するとどうでしょう。

「自由に食べろ!」と言われると、ストレスがなくなって食べる必要がなくなってしまい、食事の量は少しずつ平均的なものに近づいていき、何より、あれだけ続けることができなかった運動が続いているそうです。

一日10回といわれたことで、まず「10回くらいならできるかも?」という余裕が生まれ、そのうえ10回しかできないことで、その10回を丁寧にやるようになったそうです。

以前は、やる気になったら突然高いゴールを設定して、クリアしたらさらに高い設定をして、そのうちゴールをクリアすることが目的になって、内容がおざなりになっていました。

そして、3日目くらいにその高いゴールに取り掛かること自体が億劫になってしまっていたのです。

「もっとやらなきゃ!」という思いから、自分で無意識に壁を高くしてしまっていたのですね。

「10回だけ」という制限をすることで、自分の「やらなきゃ」という意識をコントロールすることができて、結果的に行動が続くことにつながったのです。

「丁寧な10回」は「おざなりの何十回」よりも結果が出ているというわけです。

② 子どもたちの毎日への活用

この考え方を子どもの日常に当てはめてみましょう。

遊ぶのはそれくらいにして、さっさと勉強しなさい!
このフレーズに関して、親としては当たり前だと思っているかもしれませんし、あえて何も疑問に思ったこともないかもしれませんね。

これをダイエットのフレーズに置き換えると、
食べるのはそれくらいにして、さっさと運動しなさい!

もし、これを言われ続けたとしたら、あなたのダイエットは続いていたでしょうか?

ここまで読んだ方はもうすでにお気づきですね。

子どもたちへの声掛けは、「遊び→ダメ、勉強→やれ」ではなく「遊び→やれ、勉強→ダメ」というのがパラドックスです。

この話をすると、その結果どうなるのかをいつも質問されますので、あるご家庭をご紹介したいと思います。

その家庭では、お子さんが小学生になった頃から「金曜日は宿題禁止デー」というユニークなルールがありました。

その代わり、思いっきり家族で遊ぶという時間を設けていたそうです。

子どもは金曜日に家で勉強ができないので、「学校で勉強をしなきゃいけない」という気持ちになり、学校の授業に集中して取り組むようになりました。

その結果、テストの点数もどんどん上がって、勉強することが楽しくなってきて、自分から進んで勉強するようになったそうです。

人間には知識欲という欲求が備わっており、本来勉強して新しい知識を得るということは欲が満たされる行為で、お腹がいっぱいになるのと同じように、幸せや喜び、快感なのです。

放っておいても、勝手にその欲を満たそうと自分で努力するのが本来の姿なのですが、親や周囲がプレッシャーをかけすぎて、子どもの知識欲を満たす権利を奪っているのかもしれません

一日10分とか一日1ページとか、お子さんが簡単にできそうな範囲から始めてみて、「もっとやりたい」という声が上がったら、「もう、しょうがないなー」と言いながら「じゃ、特別に2ページまでね」と制限を緩めていくのもいいかもしれませんね。

☘ 物事を続けることは自信を生む

実は、「物事を続ける」というのは、その人の「自信」につながっていきます
自信をつけるために最も手っ取り早い方法の一つなのです。

どんな些細なことでも、「続いている」、「続けることができている」という状態は、人に自信を与えるに十分な行為なのです。

そしてその自信が、その行為を楽しくさせてくれて、その後も無理なく続けさせてくれるという好循環に導いてくれます。

そこまで来たら、ダイエットは成功と言ってもいいでしょう。

というよりも、ダイエットをしていたこと自体を忘れるくらい、食事に対する高い意識や運動の楽しさが、自信とともに日常に溶け込んでいるかもしれませんね。

ダイエットに限らず、日常のどんな些細なことでも、「続ける」ことはそれだけで難しいタスクをクリアしているという自信を与えてくれます

あなた自身もお子さんも、パラドックスを使って、続けることができたという成功体験を是非たくさん積み重ねてみてください。

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