今回は、「あいまいさ」を身につけることをクローゼットの断捨離(整理整頓)に例えて考えてみました。
断捨離をしようと奮い立ったこと、一度は経験があるのではないでしょうか?
あいまいさの引き出しがあれば、断捨離も対人関係も上手く行くかもしれません。
「あいまいさ」のモデルとは?
子ども達は、学童期(小学生低学年)が始まる頃から、親の人間関係のモデルをみて学習し始めます。
~ 対人関係のモデルとは ~
- 人との付き合い方
- 人との距離の取り方
- 対人トラブルの処理の仕方
- 困ったときの対処の仕方、などです。
~ 学童期に言い換えると ~
- 友だちとの距離の取り方
- ケンカの仲直りの仕方
- いやなことがあったときの対応
- 困ったことが起きたときの処理の仕方、などでこの頃のほぼ全ての人間関係に関わります。
親は会話の中で、「それは○○だったね。」と子どもの気持ちを受け入れながら、「こんなときは、こうしてみたら?」とモデルを示します。
その際、できるだけ子どもが自分で対処できるように促すことが大事です。
学童期前期の7歳ころまでには、人間の考え方のスタイルが決まると言われています。
このころに親から見て学習した対人関係のモデルが子ども達の今後の対人関係のパターンを形作るのに大きな役割を果たします。
あいまいさの無い子どもたち
しかし、子ども達の中には考え方に余裕が無く、白か黒かしかない子が多く見られます。
「白か黒かハッキリさせないと気がすまない。」と考える子が増えてきているのです。
そして、そんな風に考える子ども達の親にも、また同じような傾向が見られます。親のモデルを見て学習しているのですね。
実は、そこにはとても大事なモデルが一つ抜け落ちているのです。それは、「あいまいさ」のモデルです。
あいまいさとは、「宙ぶらりん力」・「曖昧耐性(あいまいたいせい)」ともいい、曖昧さに耐える力のことです。
すぐに答えを出すことに比べて、あいまいな状態は実はとても不安です。
その不安をそのまま受け入れ、不安に耐える力がないと、違いを受け入れられず、安定した人間関係が築けなくなります。
あいまいさのモデルを親が示すことで、子ども達が柔軟性を身につけて、グレーな社会の中を生き抜いていく力を間接的にサポートすることに繋がります。
白と黒の世界観
白か黒か(勝ち負け、正誤、0か100)のモデルしか知らずに育つと、引き出しは2つです。
この中に全てを入れようとします。
「白でないなら黒。」「好きじゃないなら、嫌い。」「100点じゃないと意味が無い。」「ちょっとでも出来ないなら、全部ダメだ。」「失敗したら、終わりだ。」「必ず誰かが悪い(自分以外)。」「お前が悪くないなら、全部俺のせいかよ。(開き直る)」「こいつ味方、こいつ敵。(自分と違う人間とは付き合わない)」
白か黒の世界では、「二者択一的な考え方」で、自分の価値観だけで結論づけて行動してしまいがちです。
その結果、自分と同じ人は良いけど、自分と違う人は排除したり、違いを受け入れられずいじめに繋がったり、安定した人間関係を築く事が難しくなります。
あいまいさの世界観
そこに、3つ目の引き出し、「あいまいさ」の引き出しを加え、引き出しを3つにしてみると、
「はっきりさせなくても、いいんだ。」「自分だけでは決められないこともある。」「他の人の意見もきいてみよう。」「もうちょっと考えてみよう。」「時間が解決してくれる。」「まあ、いっかぁ。」「こんなこともある。」「こんな人もいる。」と白黒以外のグレーゾーン、決着をつけない、問題を先延ばしにする、他者に委ねる、時間をかける、といったことができるようになります。
そして、実はこのあいまいさの引き出しが1番収納力が多いように思えます。
クローゼットの断捨離と同じ
これをクローゼットの整理整頓(断捨離)に例えてみると、よくわかります。
断捨離をするときに、よく素人がやろうとするのは、まず2つの箱を準備して一気に仕分けようとします。
一つは「要るもの・とっておく物」(白)、もう一つは「要らないもの・捨てる物」(黒)です。
しかし、2つの箱に全ての衣類を入れるとなると、作業が意外とはかどらなかったなんて経験はありませんか?
なぜなら、二者択一の判断が難しいからです。
そして、時間も気力も労力も使い、とても疲れてしまい、結果、時間内には終わらないなんてことに。
これでは、整理整頓がさらに嫌いになりますね。
しかし、テレビや本でよく見るプロはまず箱を3つ準備します。
必要(白)、とりあえずキープ(あいまい)、捨てる(黒)です。
すると仕分けの作業が思いのほかスムーズに進み、結果あいまいの箱の中身が1番多かったりしますね。
あいまいの箱の中身は「捨て時のタイミングを計っている」ということだそうです。
要するに、決断を先延ばしにしているわけですね。しかし、断捨離としては、結果的にこちらのほうが効果的に進んでいますね。
“曖昧さ”というモデルのプレゼントを!
このように、日常生活においても、あいまいさの引き出しを持っておくことで、選択の幅を広げ、柔軟に物事を決断する事ができます。
マイペース、マイルール、自分らしさ、人と違う、逃げ道、といった世間一般の常識や多くの人が使うルールに属さない独自の価値基準を持つことで、極端な自責や他責にならず、違いを受け入れ、他者との境界線を引く事が出来ます。
そして、いろんな人間関係をスムーズに柔軟に考え、安定した関係を続ける事ができるようになります。
この「あいまいさ」のモデルをお子さんが小学校に入る頃から意識して、是非プレゼントしてあげてください。
この先長い彼らの人生をきっと豊かにしてくれることでしょう。
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