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皆さん、こんにちは。
いつもおやこ心理相談室をご利用いただき、ありがとうございます。
今回は、「サイモンズ式分類」をかいつまんでご紹介したいと思います。
サイモンズ式分類とは、親の養育態度を4つのタイプに分けて、それぞれの特徴をみていくものです。
1939年にアメリカの心理学者サイモンズが、親の子育てに対する態度が子どもにどのような影響を与えるかについて研究する中で使用した分類方法です。
それ以来、心理学の世界で長く使われてきました。
子育てについて不安を抱えている方や自信がないと心配されている方は、ご自身の、またはご夫婦の日頃の子育てを振り返る際の参考にしてください。
☘ 4つのタイプとは?
サイモンズは、まず、「支配―服従」という縦軸と「保護―拒否」という横軸で4つのエリアを作りました。
それぞれが、以下の4つになります。
① 支配×保護の過保護型
過剰に世話を焼きすぎて、子ども自身の成長の機会を奪ってしまう養育タイプ。
子どもは依存的で、自主性が無く、打たれ弱くなる。
② 支配×拒否の高圧型
子どもを受け入れず、命令と罰で親の思うとおりに行動させようとするタイプ。子どもは自主的に動けなくなり、指示待ちとなり、自己肯定感が低くなる。
③ 服従×保護の甘やかし型
子どもの顔色を伺い、子どもの言いなりになるタイプ。
子どもは問題解決の機会を与えられず、共感性が乏しく自己中心的になる。
④ 服従×拒否の無関心型
親自身の生活が中心で、子どもへの関心が薄く、主体的に子どもと関わらないタイプ。子どもはさみしさと強い自責感から被害者感情が育つ一方で、自己肯定感が育たない。
☘ 簡単チェックリスト
★ 過保護型
- 家庭や学校の中で子どもが自分でできること、乗り越えるべき課題を先回りしてやっている
- 子ども同士のトラブルを代わりに解決しようとすることがある
- 学校や習い事など、自分で行くことができるのに、必ず送迎している
- 心配性と過保護の区別がよくわからない
- 子どもが失敗した時に他人や環境のせいにすることが多い
★ 高圧型
- 生活全般について、「○○をしなさい、○○はするな」と命令している
- 勉強や将来について「○○学校へ行け、○○(職業)になれ」と命令している
- 言うことを聞かない場合や、失敗した場合に、罰を与えている
- 自分のコンプレックスを子どもに投影している(自分が勉強できなかったから、子どももできないと思い込む)
- 子どもの気持ちや希望より、世間体や自分の理想を重視している
★ 甘やかし型
- 「甘え」と「甘やかし」の区別がよくわからない
- 子どもの要求に甘く、モノや食べ物、お金等を言われるがまま与えている
- 習い事をやりたいと言ったら習わせて、飽きたらやめると繰り返している
- 子どもの機嫌を気にして、顔色を伺う
- 子どもに依存され、頼られることに喜びを感じる
★ 無関心型
- 子どもの成長に興味がなく、子どもの世話や子どもとの関わりを面倒に感じる
- 子育ては、衣食住を与えていればそれでいいと思っている
- 子どもが問題を起こしても、それは子どもに原因があり、親に責任はないと考えている
- 社会のルールやマナーは自然に身につくものなので、わざわざ教える必要はないと思っている。良くないことをしても指導しない
- 虐待と思われる行為をしている(叩く・蹴る・家に閉じ込める・食事を与えない・家から締めだす・「産まなければよかった、ほしくなかった」などの暴言を吐くなど)
当てはまっている、常にやっている、心当たりがあるという項目が多いとその型に偏っている可能性があります。
同じように当てはまる型が複数存在することもありますし、対応する子どもによって違う型に当てはまることもあります。
☘ 理想的な子育て?
サイモンズは、理想的な子育ては、「支配―服従」という縦軸と「保護―拒否」という横軸が交わる真ん中の位置であると考えています。
すなわち、どこにも偏らず、「支配―服従」と「保護―拒否」の要素をバランスよく使い分けており、場合に応じて適度に行ったり来たりできるということです。
バランスがとれた保護者のもとでは、子どもたちの心は安定し、健全に成長することができます。
とはいえ、いつもいつも真ん中で安定している子育てというのは現実的ではありません。
たまに、高圧的に怒ることや、甘やかしてしまうことは誰にでもあります。
第一子と末っ子で違う対応をしてしまったということも、子どもがたくさんいるご家庭ではよく見られる光景です。
単発的なバランスの乱れが即問題につながるということはありません。
☘ 注意が必要な子育てとは?
では、どのような場合に気を付けた方がいいのでしょうか?
養育タイプがどの型であっても、そのタイプに極端に偏ることで問題が発生する可能性が高まります。
また、4つのタイプを行き来すると言っても、極端な行き来の仕方をしてしまうと、それは4つのタイプ全部に偏っていることになります。
最も注意が必要なのはこの偏りが極端に強いケースです。
そして、それが日常的または、親の気まぐれで断続的に続くことです。
日常的に極端に偏った子育てをしていると、子どもたちは、親との関係の中で安心を感じることができず、外の社会に出ても安定した人間関係を築くことができません。
また、親の気まぐれで日によって言うことが違うなど、断続的な偏りを見せていると、子どもは親の言うことを信頼することができずに、親の気まぐれによっていつか自分は見捨てられるのではないかという「見捨てられ不安」を募らせていきます。
それらの結果、常にさみしさで一杯の状態で、それでも人を信じることができずに、誰にも助けを求められず一人で苦しむことになりかねません。
その先に、いろいろな問題が発生してくるのです。
☘ 子育てを振り返るクセをつけよう
誰でも、ときに行き過ぎてしまうことはあります。むしろ、それが普通で、当然のことです。
だからこそ、日頃から自分の子育てを振り返るクセをつけておくといいと思います。
その際に、このサイモンズ式分類のような分かりやすいチェックリストを使って、自分の行動が偏りすぎていないかを振り返ってみるといいかもしれません。
間違いややりすぎに気が付いた場合は、正直にそれを子どもに伝えて修正していけばいいのです。(←プライドの高い親はこれが一番難しいようですが…)
そういう柔軟性を持つ親のもとであれば、柔軟な子どもが育つことでしょう。
この柔軟性というのは、長い人生を生きていく上で、子どもたちを支えるとても大切な心の持ち方でもあります。
強い心とは?柔軟でしなやかな心の育て方
そして、この柔軟性は、子どものうちにご家庭の中で身につけることが最も望ましいのです。
是非、子どもたちが巣立つ前に、子どもたちに親の柔軟な姿勢をたくさん見せてあげて下さい。
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