皆さん、こんにちは。
私は日々の心理臨床の中で、様々な悩みを抱える方たちのお話を聞かせてもらっています。
来談当初は、子どもの不登校の問題で訪れていたご家族が、いつの間にか子どもの問題が解消され、もっと深いところにあった夫婦の問題が浮き彫りになるケースも少なくありません。
今回は、私が数年前に出会ったあるご家族の例をご紹介したいと思います。
不登校になった高校1年生女子
高校1年生の娘が不登校になってしまったと慌てた様子で、お母さんが相談にお越しになられました。
話を色々聞いていくと、自宅では笑顔で家族と会話をしたり、食事も家族と一緒にしたりと、いたって元気に過ごすことができるにもかかわらず、朝になると「学校は行きたくない」「今日は家にいる」と訴え、全く学校に行く気がないといいます。
しかも最近になりリストカット(自傷行為)をしている娘の姿を発見してしまったらしいのです。
二回目の面接では、お母さんと一緒に娘さんも来談され、その後娘さんとの個別面接が始まりました。
学校生活や家庭生活、友人関係など、色々と話を聞かせてもらいながら、丁寧に心理面を扱い、感情の整理を行っていくと、数か月後には、自分の力で学校へ戻ることができるようになりました。
毎日安定して登校できるようになり、カウンセリングもそろそろ終わりですという段階に来たとき、私の相談室にわざわざやって来て、「先生、私の面接はもう終わりになりますけど、私の面接が終わっても、お父さんとお母さんだけは、まだ、先生の面接を続けてやってください」と言うわけです。
「どうしてですか?」と聞くと、「私は、もう安心して学校に行けるようになったし、将来の夢も持つことができました。でも、お母さんを一人で家に置いておくのが心配なのです」と言います。
私が「お母さんには、お父さんがいるじゃないんですか?」と聞くと、
「お父さんとお母さんが二人で仲良くしているなら安心して学校に行けるし、私はこんな不登校になっていませんでした。お母さんとお父さんが離婚するのではないかといつも心配で、それを見張っているようになったのが私の不登校の原因なのだということが、カウンセリングでよくわかりました。
私は、自分の人生はお父さんとお母さんの人生ではなく、私自身の人生だと思って、自立して学校へ行けるようになりましたが、お母さんは、まだまだお父さんとはうまくいっていないし、私がそばにいないと、お母さんはすごく孤独になってしまうから、先生の面接が続けば、お母さんも支えられてやっていけると思うので、私も安心して学校に行けます。どうか先生、母をよろしくお願いいたします!」と言って、深々と頭を下げたのです。
親を必死に守ろうとする子どもたち
親離れができにくい、自立しにくい子どもの背景には、しばしばこうした両親の不仲による家庭の中の不安というものがあって、子どもは見かけ上は学校に行かなくて「いつになっても甘えていて!怠けていて!」と周りから言われてしまいますが、本当は逆で、自分が家庭の中にいなくてはうまくいかなくなってしまうと思い、なんとかお父さんとお母さんを仲直りさせたい、自分の力で家の中を守らなくてはという気持ちが、子どもの心のずっと奥のほうに潜んでいる場合が多いのです。
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