皆さん、こんにちは。
いつもおやこ心理相談室をご利用いただきありがとうございます。
二学期が始まったこの時期、高校受験や大学受験を考えている子ども達にとっては、本格的に準備がスタートする時期でもありますね。
こんなに大きな人生の選択は、子ども達に訪れる初めての試練といっても過言ではありませんね。
たくさんある選択肢の中から受験する学校やコースを選ぶこと、受験に必要な科目を調べて、その対策をすること、遠くの学校を受ける場合は通学の方法や、場合によっては一人暮らしなどの準備もあります。
もちろん、日頃から勉強も沢山しなければなりません。
これらの行動の一つ一つが、子どもたちにとってはストレス以外の何ものでもありません。
親御さんの中にも受験を経験したことがある人が多いと思いますが、受験という一連の作業は、子どもたちに大きな負担になっていることをまずご理解いただきたいと思います。
無理な受験が及ぼす影響
頑張って勉強して受験して、結果が思うように行かなかった時に、心がポキンと折れて、何に対しても投げやりになったり、やる気を失ってしまうこともあります。
結果が上手く行ったとしても、無理をして入った学校のレベルについていくことがとても大変で、入学後に燃え尽き症候群のような症状を発症し、不登校になってしまうこともあります。
このようなケースは進学校に多く見られ、最近増えてきているご相談の一つでもあります。
これらのケースの共通点は、「受験を頑張りすぎた」ことです。
せっかく入った学校で楽しい学生生活を送るうえでは、受験で燃え尽きてしまわないことも大切です。
今回は、受験で燃え尽きてしまうことを防ぐうえで、子どもの心理の専門家の視点から、ご家族で考えてほしい大切なポイントを3つご紹介したいと思います。
ポイント①子どもが自分の意志で選ぶ
最もシンプルで、最も大切なポイントは、「子どもが自分で選ぶ」ことです。
受験は「どの学校に入って何を学び、将来何をやって生きていくか」という自分の人生を考え始めるスタートポイントです。
この大切なタイミングで、親や家族が
「この学校に行きなさい。」
「あなたにはこの学校は無理だから、ここはあきらめなさい。」
などと、本人の意志をそっちのけにして判断してはいけません。
☞(こういうことを言う親は、それまでの生活の中でも、あれこれと指示的に、先に口を出しています。そして、その本心には「将来この仕事についてほしい」「こんな大人になってほしい」、そして「あわよくば子どもの人生をずっとコントロールしていきたい」という下心があります。)
これをやられると、子どもは「自分のために頑張る」のではなく、「親のために頑張る」ことになってしまいますね。
子どもは、それ以降の人生を親のために生きていくことになってしまい、自分の人生が自分事として受け取れなくなり、そのままいくと自分で責任が取れない大人になってしまいます。
その結果、何か上手く行かないことが起きると、親(他人)のせいにして、いつまでも親(他人)を責めるクセが出来上がってしまいます。
受験は、実は、この「親のために頑張る」を断ち切って、「自分のために頑張る」ことを学ぶ絶好のチャンスです。
そのためには、どんなに無理そうに見えても、本人が納得するまで自分の意志でやらせてみることです。
この時点で、これまで親のために生きてきた子ども達は、自分で選択・決断ができない可能性もあります。
その場合でも、親は「口出しせずに子どもの意志が芽生えるのを忍耐強く待てるか」が問われます。
自分の意志で行動できるようになると、自然と方向性が見えてきますし、たとえ結果が上手く行かなくても、自分で決めたことなので、諦めがつくし、誰のせいにもできません。
もし、ここで挫折したとしても、それはその子にとって必要な挫折体験なので、親が勝手に「かわいそう」と決めつけないように注意しましょう。
ポイント②高校や大学は通過点の一つ
次のポイントは、「高校や大学はゴールではなく、通過点の一つ」だという考え方です。
これは、「子どもが自分で選ぶ」というポイント①を支えるためのものでもあります。
子どもが初めて受験をするというご家族がよく陥りがちな考え方に、受験そのものをゴール設定してしまうというものがあります。
「受験に合格することがゴールであって、家族みんながそのために何でもする」といった考えです。
この発想はとても危険で、「燃え尽き症候群」を引き起こす可能性があります。
親も一生懸命になって子どもの受験を支えているので、まるで自分が受験しているような感覚に陥り、ときに子どもの意志を尊重することを忘れてしまいます。
子どもはそんな親に気を遣って、本音を言えなくなったり、途中で方向転換できなくなって、親の期待を裏切らないために無理することになりかねません。
それを防ぐために、日ごろから「受験はゴールではなく、通過点の一つ」であることを家族で確認しておきましょう。
そうすることで、子どもも受験に向けて気持ちがラクになりますし、たとえ失敗したとしても必要以上に追い詰められることなく、「通過点の一つなんだから」と切り替えることができます。
ポイント③「誰の不安か」を見極める
最後のポイントは、その不安は「誰の不安か」を見極めることです。
受験を迎えるにあたって、本人も家族も不安になるのは当然のことで、なんらおかしなことではありません。
しかし、不安にきちんと線引きをして、「これは自分の不安か?親の不安か?」を明確にしておくことはとても大切です。
そうすることで、自分の不安には対応することができ、不必要な不安には振り回されることがなくなります。
これは、親も意識しておく必要があります。
親御さんの中には、自分で自分の不安を抱えられないので、その不安を直接子どもにぶつけることで解消しようとする人がいます。
あれこれと先走って口を出し、手を出してしまったり、模試の結果に本人以上に反応したり、「本当に大丈夫なの?」などと心配をすることでプレッシャーをかけすぎてしまいます。
本人は悪気があるわけではなく、ほぼ無意識にやっているので、この行動が子どもにプレッシャーをかけていることに気が付いていない親御さんも多いです。
子どもからしてみれば、自分の不安だけでもいっぱいいっぱいなのに、親の不安までぶつけられたらたまったもんじゃないですね。
親としても、自分の不安で子どもを追い詰める、なんて願っているわけありませんから、お互いにとって不毛な行為なのです。
この不安は「自分のもの」と区別することで、子どもに自分の不安をぶつけたり、あれこれと必要以上に口を出したり、プレッシャーをかけることを防ぐことができます。
その結果、子どもは自分のやるべきことに集中できるようになります。
受験を迎えるご家庭は、以上の3つのポイントを心掛けながら、子どもたちが燃え尽きることなく受験を乗り越えて、楽しい学生生活が送れるように、一緒に応援していきましょう。
もし途中で燃え尽きてしまったとしても、適切な対応を取れば大丈夫ですから、あわてず焦らず、専門家にご相談ください。
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