「うちの子は本当に優柔不断で何一つ自分で決められない!」
「どうして何かを決めるのにこんなにも時間がかかってしまうのでしょうか?」と疑問や悩みを持たれている親御さんは結構いるものです。
今回は、子どもが自分で判断し、自分で決断できる力、『自己決定力』について解説していきたいと思います。
自己決定力はいつから育てられるのか?
臨床心理学の世界では、この「自己決定力」を育てていく上で適切な時期というのは、自我が芽生え、自我を形成する時期、つまり3歳から4歳頃から始まると言われています。
この時期に「自己決定力」を育てることを妨害されてしまうと、自己決定力は小さく萎縮したまま成人してしまうことになります。
妨害されるというのは、周囲(特に母親や父親)が子どもの意思表示を待てずに親の判断で一方的に決め付けてしまったり、子どもが意思表示をした際に、ひどく叱ってしまったり、否定してしまった場合です(『自発性を育てるには』参照)。
こういったことが繰り返されていくと、自分の決定権を完全に放棄してしまったり、「自己決定」という感覚そのものが失われてしまいます。
行動が周囲の期待に縛られる
私は、こういった「自己決定力」を幼少期の頃から妨害されて成人に達した方々を多数見てきましたが、彼らに共通する特徴は、行動が周囲の期待に縛られているということです。
彼らは、自分が「こうしたい!」と思う行動ではなく、周囲が自分に期待しているように振る舞おうとします。
内心では、周囲が期待する自分を演じなくては見捨てられると思っているので、相手がどんなサービスをすれば喜ぶかを必死で読み取ろうとするのです。
そうこうしている間に、自己決断できなくなってしまいます。
周りが「いい」と言えば「いい」し、周りの雰囲気を見て「おもしろくなさそう」なら「おもしろくないだろう」と思ってしまいます。
その結果、彼らは、何が正しいか正しくないのかという自分なりの確信が持てず、いつも「これでいいのだろうか?」という漠然とした不安を抱えているのです。
また彼らの心の中には「親ならこういうだろう」という漠然とした恐れと不安を抱いていることも多く、いつまでも親の判断や価値観に縛られているケースも少なくありません。
ですから、子ども時代に、いかに安全に自己決定できる環境を、子ども達に提供できるかが親の仕事の一つではないかと思っています。
自己決定力は心の筋肉
私は、この「自己決定力」を「心の筋肉」と呼んでいます。
ギプスをはめて、ギチギチに拘束されると筋力は落ちてしまいますが、やさしく正しく鍛えれば、着実にアップします。
では、どのように正しく鍛えれば、「心の筋肉」がアップするのでしょうか。
色々な方法がある中で、今回は「自己決定力」を育んでいく上で、私が大切だと感じる点を一つに絞ってお伝えします。
まず、子ども自身が自分で選び、決断できるような機会を増やしてあげることです。
小学校低学年くらいであれば、「あなたはどう思うの?」「〇〇に対して、どういう風に思っているの?」という質問を投げかけてもいいと思います。
答えられるか答えられないかは別として、こういった質問をすること自体に意味があります。
このような会話は、子どもが自分の気持ちや考えを意識化することを助けてくれます。
自分は何がしたいのか、したくないのか、どちらでもいいのか、あるいは、よくわからないのかを意識化する訓練になります。
この時のポイントとしては、二者択一を迫るのではないということです。
選択肢は、「したいか、したくないか、好きなのか、嫌いなのか、どちらか一方だけではない」ということです。
どちらかにはっきりさせるということではなく、好きでもないし、嫌いでもないという答えもあるので、「よくわからない」というのも子どもの気持ち、選択肢として認めてあげることが大切です。
幼少期の頃から、周囲の大人が、繰り返し子どもの意見や自己決定を促すような質問を投げかけてあげることで、自然と心の筋肉が鍛えられていきます。
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