今回は、日頃から私が扱っている子どもたちの問題行動について焦点を当ててみたいと思います。問題行動というのは、心理的要因が少なからず影響している、引きこもりや非行、自傷行為や摂食障害、家庭内暴力などのことを言います。
子どもたちはある時期(多くの場合、思春期)が来れば必死になって「親離れ」しようともがき始めます。これは、子どもが家や家族や親に守られた世界から離れて自立した大人になるために必要なステップであり、心の発達においてとても自然なことです。
親も、子どもが「親離れ」を通して成長していくためには、「子別れ」という“協力”をしていく必要があり、これも親の大事な仕事の一つです。
発達心理学では「分離・固体化」と呼ばれていますが、このステップを通過することによって、子どもは情緒的・精神的に「成長」していきます。
ところが、この固体化という「成長」ができない子どもたちがいます。「成長」ができない子どもたちの多くは、親子の密着が強く(特に母親との密着)、しかもその密着した関係が長く続きやすいという特徴があります。
こういった親子では、親がいつまでも子どもにしがみつき、子どもを離そうとしません。親は気づかないのですが、親自身の固体化=成長が十分になされていない場合もあります。それが子どもの心の成長を阻んでいくのです。
親は誰しも子どもに期待するものですが、子どもの人生が、まさに親の人生や生きがいと思いこんでしまい、過度な期待とプレッシャーをかけてしまうと、結果的に子どもにしがみついていくことになります。「子どもなしでは生きていけない!」という発想です。
こういった親の特徴としては、以前のブログでも取り上げたように、夫婦関係に機能不全を起こしていて、本来母親の不安や不満は夫との関係の中で処理されるものが、子どもとの関係で処理されていきます。子どもが母親の専属カウンセラー役になっていることも珍しくありません。
こうなってくると子ども側はどう感じるかというと、母親のことを「かわいそう」という存在で見ていきます。かわいそうな存在から一心に期待されれば、子どもとしては答えるしか選択肢は残されていません。こういった形で、しがみつかれ、親の手を振りほどけなくなった子どもたちは、成長に挫折してしまいます。
私が出会ったある親子は、長年引きこもっていた子ども(娘)が自立しようとする度に、決まって母親が病になったり、大ケガをしていました。そして病気や大けがの度に、娘は自立を阻まれ、いつの間にか母親の面倒を見なくてはいけなくなってしまったのです。
成長に挫折した子ども達がどうなるかというと、親や家族との「融合」=「子ども返り」(退行)をはかり始めるのです。赤ちゃんと母親との関係に見られるような、母子未分化状態に逆戻りしようとするのです。
例えるならば、ふたつのお餅がぺったりとくっついてしまった状態に似ています。いったんこうなってしまうと、別けるのがとても難しくなってしまいます。なんとかして別れようというところから、家庭内暴力や摂食障害など様々な問題行動が起こってくるのです。
こういった問題に発展してしまう前に、親子関係でも適度な距離とバランスをとり、時期が来たらスムーズにふたつのお餅に分けられるように準備しておくことが、子どもの成長となり、親自身の成長にもつながってくるのです。
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