親から、健康な自己愛(自分を愛する力)を育てる環境を与えてもらえない子どもがいます。
彼らは、自分に対して肯定的な感情を持てずに育ってしまうので、いつも自信がなく、不安の強い子ども達なのです。
では、健康な自己愛を育てる環境を与えてもらえない場合とは一体どういうことなのでしょうか。
親から拒絶されて育った子
まず、親から拒絶されて育った子どもは、自分に対する確信が持てません。
何かしても親から無視されたり、叱られてばかりいると、「自分はダメなのだ」と思うようになります。
ハッキリとした身体的な暴力や性的虐待を受ける場合もありますし、心理的に不安定な環境でもそうなります。
たとえば、身体が弱く、すぐに入院してしまうような母親は、子どもに安心感を与えられません。
なぜならば、子どもは「いつ母親がいなくなってしまうか」と不安で、安らぐことができないからです。
また、家庭内に緊張や怒りがみなぎっている場合も、子どもはそれを「自分のせいだ」と思い込んでいくようになります。
両親の仲が悪く家庭内が殺伐としていると、子どもは「自分が悪い子のせいだ」と思います。
本当は子どもには何の責任もないのですが、その子は必死に「良い子」になって、家庭内の調和を取り戻そうとするようになります(一家の平和を望む子を参照)。
自分が「良い子」になれば、親から認められる。
今は「悪い子」だから拒絶されているという世界観を作り上げていくのです。
ダメで劣った自分を自分で許さず、憎みます。
「このままの自分で愛される」という確信が持てないので、常に「このままの自分では愛されない、もっと努力しなければ、もっといい子にならなければダメだ」という偏った確信を持ってしまうのです。
褒められ過ぎた子
一方、子どもが何をしても褒めちぎり、かわいがり、甘やかした場合も、健康な自己愛を育てることは出来ません。
いつも褒められることに慣れている子どもは、たまたま親が普通の態度で接すると、拒絶されたように感じてしまうのです。
ごちそう慣れした人が、普通の食事をまずいと感じてしまうようなもので、いつもいつもごちそうを求めるようになってしまいます。
子どもに適度な規制を加え、欲求不満(怒り)を持たせるのも親の仕事のひとつと言えるかもしれません。
親以外の他人は、そんなにいつもほめてくれるわけではありませんから、親からの規制に慣れていない子どもは、ひとたび外に出ると拒絶されたように感じて、家の中にこもりがちになってしまいます。
現代の引きこもり問題の背景には、こういったタイプの子ども達が多いのです。
彼らが成長していくと・・・
こんなふうに育った子は、自分の感情や意見を押し殺して、つねに他人の顔色をうかがうようになります。
また、自分の中に高い理想像を抱くようになるので、自分にも他人にも高い理想を求め、期待していきます。
他人に、理想の自分を見てもらいたいのでウソをつくこともあるし、本当の自分を見破られたくないので、人間関係は希薄になります。
相手のことを真剣に思い、怒るときには怒ってくれる、耳が痛いことでも真剣に向き合ってくれるみたいな相手とは付き合えません。
相手の目にうつる理想像が崩れたら、もう「拒絶された」と感じてしまい、自分から関係を切ってしまうことさえあります。
要は、人に愛されるためには「完璧でなければいけない」と信じ込んでいるので、その結果、失敗を恐れ、生きることが怖くなってしまうのです。
ですから、子どもの年齢が幼いうちから、健康な自己愛を育ててあげられるような環境を提供してあげることは、その後の子どもの人生を考えた上ではとても大切なことなのです。
健康な自己愛の育て方は、今後の投稿で取り上げたいと思います。
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