みなさん、こんにちは。程度の差はあれ「子どもの頃に親から虐待されていた・・・」という訴えは、ここ数年でだいぶ増えてきているように感じます。
全国の児童相談所が2014年度、児童虐待の相談・通報を受けて対応した件数は、過去最悪の8万8931件に上ったことが2015年10月8日、厚生労働省のまとめで明らかになったそうです(読売新聞より)。
前年度に比べ、20%も増加しているとのことで、我々心理職にとっても深刻な社会問題として受け止めていかなければいけないと思っています。
実際の臨床場面でも、「虐待されていた過去」を涙ながらに語る方も少なくありません。
今回は、大なり小なり親に虐待された経験をもつ子どもが、その後どのような人間関係を築いていく傾向にあるのか見てくことにしましょう。ここではある女性を例に挙げて解説していきます。
人間関係の基礎は母親との関係
私たちの人間関係は、ほとんどが親、それも母親との関係をなぞるものです。
母親が残酷で、自分を一切認めず、いじめられ続けた人であった場合、「自分をいじめる人との関係」に安心感を抱いてしまうことがあります。
なぜなら他の母親を体験していないので、自分を冷たく扱う人のほうが馴染がいいわけです。
こういう人は、もし他人から大切にしてもらったりすると、どうにも落ち着きません。
「何か裏があるんじゃないか?」と疑ってかかってしまうのです。
その人にとっては、「自分が大事に扱われ、心から愛される」というのは未知の世界ですから、勝手が違ってどうも居心地が悪いのです。
そして、大急ぎで、また自分をいじめる相手との関係を求めていきます。
実際に、暴力などの虐待ではなくても、親に「お前はダメだ、ダメだ」と言われ続けて育った女性は、自分を「ダメ」扱いする男性を選んできます。
そして彼になじられながら「ほ~ら、やっぱり私はダメなのよ・・・」と確認し、その関係に安心していきます。
ひどい扱いをされることが愛情という思い込み
親にひどいことをされても、「あんな親でも、私のことを愛してくれている」と思っているので、男性にどんなひどい扱いをされても「こんな彼だけど、本当は私のことを愛してくれている!」と思っていきます。
ひどいことをされるのが「愛」だという、どこか歪んだ認識を持ってしまうのです。
「なぜあんないい子が、あんなどうしようもない男と結婚するのかしら」と周囲が不思議に思うような不釣り合いな結婚は、たいてい親との関係が原因で起こっています。
虐待された子どもは、親に気に入られようと必死に「良い子」をやってきましたら、周囲の願望を読むことに関してはスペシャリストです。
自分の欲求より何より、まずは他人の欲求を満たすことを優先し、つくしていきます。
そして自分をいじめる「つくしがいのある」男性を求めていくのです。DV男やダメンズなどがこれに当たります。
彼女たちは、どこかで、その冷たい男が、自分の愛によって改心し、暖かく信頼できる人物に変わってくれることを強く望んでいるのです。
この心理は、恋愛依存を繰り返す方の深層心理と同様のものです。
そうすることで、自分に冷たかった親から負わされた心の傷がいやされることを強く願っているんですね。
逆に、普通の男性を自分に冷たくするように作り変えてしまう場合もあります。
「いじめられる自分」に慣れてしまっている人は、相手から自分をいじめる気持ちを引き出すのがうまいんです。
優しくされると「こんなはずはない。今はこうだけど、いつかは私をいじめるんじゃないか」と不安になり、わざわざ相手に嫌われるような態度を取ったりします。
こうして、思い通りに相手が自分に冷たくするようになると「ほ~ら、やっぱりね」と安心します。
「結局、自分はいじめられるのだ。いじめられるに値する人間なんだ」という信念を確信して、さらに強化をしていくというパターンが起こってくるのです。
このように親に虐待された経験をもつ子どもは、その後の人間関係に大きな傷を負ってしまうことがあります。
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