皆さん、こんにちは。
今回は、親の何気ない一言が子どもにどんな影響を与えるのか、ある実例を紹介しながら解説していきます。
これから紹介する実例は、数年前に私が担当したケースですが、多くのお母様にも共通する点が沢山あると思います。
是非、これから登場するA子という娘の立場に立ちながら、この投稿を読み進めてみて下さい。
テキパキ教師の母親に育てられたA子さん
A子は父親がサラリーマン、母親は教師という家庭で育ちました。
父親はいわゆるお坊ちゃん育ちで、自分中心的なところがあり、また病弱で会社を休むこともしばしばでした。
一方、学校では有能な先生である母親は、テキパキした性格で、家のことをすべて取り仕切っていました。
A子には弟が一人いますが、喘息とアレルギーもちなので、母親の注目はどうしても弟のほうに向かいがちです。
子どもの頃、母親からこんなふうに言われたことがありました。「弟は病気だからやさしくしてあげないといけないけど、あなたは我慢するのよ!」。
A子が「なぜか?」と聞くと、「あんたはちょっとやさしくすると、すぐにつけあがるからよ!根性が悪いんだから!」そう言われると、何も言い返せませんでした。
また、一人で何かをして嬉しがっていると、「あんたはそうやって、いつも目立ちたがるんだから。少しは弟のことも考えなさい!弟は、そんなふうに騒ぎたくてもできないのよ」。
母親からいつも、まるで「おまえも不幸でいなければならない」と言わんばかりの皮肉やいや味を浴びせられているうちに、A子は、子どもながらに、できるだけ目立たないように周囲に気を遣いながら生きるようになってしまいました。
A子が「ピアノを習いたい!」と言うと、母親は「バイオリンをやりなさい!」と、自分が子どもの頃にやりたかったことを強引に押し付けました。
しかも、A子がバイオリン教室に行こうとすると、聞こえよがしにボヤきます。
「おまえは金食い虫だ。こんなぜいたくさせてやっているのに、ちっともありがたいと思わないんだから!感謝の一つくらいしなさい!」。
そのたびにA子は罪の意識にかられ、バイオリンを習っていても少しも楽しくありませんでした。
ときには無意識のうちに拒否反応が起きて、教室に行く時間になると頭痛や腹痛がするようになりました。
そこで、「お稽古を休みたい」と言うと、「あんたは、いつもそうやって仮病を使って怠けようとする!いったい、いくらかかっていると思うの。つべこべ言わずに、早くいきなさい!」
当然、こんな精神状態で習い事をしても上達するはずはなく、自分がムダ金を使っているかと思うと、罪の意識はつのるばかりでした。
しかも、これまでかかった費用のことを考えると、自分から「もうやめたい!」と言い出すこともできず、どんどん落ち込んでいくばかりでした。
こうした家族関係の中で成長したA子は、大人になっても、気持ちが落ち込むことが多く、自分の子どもを育てるのが苦しくなったため、私のところを訪れたのでした。
子どもの前で直接口にすることの意味
A子の母親の言葉を一つ一つ見ていくと、だれもが無意識のうちに口にしてしまいそうなものばかりです。
しかも、教師という指導力を要求される仕事をしているうえ、弱弱しい夫に代わって家庭も切り盛りしなければなりません。
おまけに子どもが喘息の持病をもっているという、なかなか大変な環境を抱えていたわけですから、ついA子にきつい言葉を浴びせてしまう気持ちもわからなくはありません。
A子の母親に限らず、どんな母親でも一度は、子どもなんて手のかかることばかりだとか、いなければいいのにと思ったことがあるのではないでしょうか。
しかし、一時的にそう思ったり感じたりすることと、それを子どもの前で口にすることでは、もたらされる結果はまったく異なってくるのです。
このように親のなにげない言葉や顔つきが、子どもの心にどれほど大きな傷を与えるのか、親としてもう一度振り返ってみて欲しいと思います。
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