みなさん、こんにちは。臨床心理学という学問を学ぶ際に、最初に必ず覚えなければいけない理論の中に、「精神発達論」というものがあります。
簡単に言えば、心の発達プロセスを年齢別に把握しておきましょうというものです。
今回はその中で、2~3歳頃の精神発達段階に焦点を当てていきたいと思います。
2~3歳の発達課題は排泄トレーニング
精神分析では、この時期を「肛門期」と名付けています。どうしてかというと、肛門を必要に応じで開け閉めすることを学ぶ時期だからです。
この時期は、排泄トレーニングに入り、オムツがはずれる時期でもあります。これがこの時期の最大の課題になってくるわけですね。
ここではじめて、子どもは衝動を我慢することを覚えて、「恥ずかしい!」という感情を獲得するようになり、叱られることの「恐怖」、ほめられることの「満足」を体験します。
ウンチやオシッコを我慢して、決められた時に決められた場所で排泄するとほめられます。
これに反して、親の命じた時や場所で排泄せず、わざとおもらしをすることもあります。親から独立して、自分の機能を自分でコントロールする能力を身につけはじめるというわけですね。
ウンチは宝物!
そもそも、ウンチもオシッコも、子どもにとっては人生ではじめて与えられる、「自分の持ち物(宝物)」です。
2~3歳の幼児が道端に落ちている犬のウンチにあれほど興味を示し、熱心に眺めているのはそのためですし、これを体内に止めておくこと、出してしまうことをめぐって、親との間でさまざまな「とりひき」をするのもそのためなのです。
「ためこんで出さないでやろう!」という反抗も出てきますが、この反抗は、それまでの子どもにはありえない行動なので、子どもは大変な武器を手に入れたことになります。
出さないでじらすと、お母さんが「お願いだから出してちょうだい!」と言う。子どももえらく優位に立った感じがするもので、「それをやってやろう!」という気持ちにもなってくる。
だからそこでけちるとか、出さないとか、そういう反抗も初めて出来るようになってくるんですね。
それから出すことで喜ばせるというのもできます。トイレやおまるでウンチをすると、親はとても喜ぶので、ウンチがプレゼントになります。
例えば、ウンチが水洗便所で流れていくときに「バイバイ!」と手を振って名残惜しそうにしているとか、すごくいいのが出たと褒められたら、「これをパパが帰ってくるまで取っておいて見せる!」と流さないので困ってしまうというエピソードもありますね。
トイレトレーニングは社会性の第一歩
このように自分の排泄を自分でコントロールできるようになると、それを使って人を振り回すこともできるようになるのです。
周囲と関わる手段を獲得したわけですから、社会性の第一歩でもあります。
しかし、この時期に、あまり神経質にトイレトレーニングをしてしまうと、偏った強迫性格の基盤を生み出してしまうことがあります。
大人社会でもいると思いますが、すごく潔癖症だったり、融通がきかないとか、自分にも他人にも完璧主義で、しかもそれを他人にも強く求めて、思い通りにいかないとすごく憤慨するとか、周囲を自分の思い通りに動かそうとするとか、こういったタイプは、この「肛門期」で心の状態が止まっている強迫性格なんですね。
この強迫性格は健常者であれば、大なり小なり持っているもので、ほどほどにやっている分には問題はありません。むしろ社会性があって、適度に責任感があって、きちんとしている人で通ります。
トイレトレーニングで大事なことは、まず、お母さん自身が気持ちを楽にして「あまり焦らず、子どものペースに寄り添いながら」進めていくことです。
3歳半前後まで終わっていなくても、あまり過度に心配しないことも大切ですね。
最新のコメント一覧