皆さん、こんにちは。
子どもが小学校5・6年生頃になると、思春期にさしかかりますね。
思春期の子どもを持つ親御さんから多くいただくご相談が「子どもが何を考えているのか分からない」というものです。
専門家としての視点から見れば、親がこのような感情を抱くのはとても自然なことなのです。
なぜなら、この時期の子ども達の多くは、自分でも「自分のことが分からない」という状態にいるからです。
細かいことが気になるAさん(小学校5年生)
Aさんは、学校の準備はいつも抜かりなく、宿題の提出も完璧で、絵の具や習字道具などは、数日前には持ってくるような用意周到なしっかり者です。
しかし、日頃から人が気にならないような細かいことまでもが気になってしまい、勉強に関しても本来の集中力が発揮できず、気になることが解決できるまで先生にいくつも質問をしていました。
時間をかけて努力している割には成績が伸びず、ご両親も子どもが理解できず、といった状態でした。
カウンセラー(以下Co):(たくさん話を聞いた後)「そっか~。先生には、Aさんは細かいことが気になるように見えるけど、Aさんはどう思う?」
Aさん:「そうなんです!人が気にしないような細かいことが気になって、いつもたくさん質問しちゃうんです。それで、先生にも質問しすぎって注意されたりすることもあります・・・。」
Co:「そうなんだぁ。人が気付かないところに気がつけるなんて、すごいことだよね。それはあなたの特性で、いいところでもあると思うから、もっと伸ばしていけるといいね。でも、細かいところが気になるって、困ることもありそうだね」
Aさん:「そうなの!細かいことを考えて全部予定を立てるんだけど、予定通りに行かないとか、邪魔されたりすると「どうしょう、どうしよう。」ってなっちゃって・・・。」
Co:「そうだと思うよ。じゃ、その時に取れるような対策を一緒に考えてみようか。」
このような会話の中で、Aさんは、自分でもぼんやりとしか理解していなかった自分の特性に気が付くことができたようでした。
何より、自分を理解して、自分の特性・傾向を言葉にしてくれる人がいるということに驚き、嬉しく、そして安心を感じているようでした。
表現がねじれているBさん(中学3年生)
Bさんは、先生やクラスメイトから何かと誤解されることが多く、些細なことで周囲とトラブルになることも多く、学校に来たり来なかったりと不安定でした。
好きなことや興味のあることは集中力を発揮して、熱中することができる一方で、勉強や学校行事にはやる気が持てないようでした。
自然と親と衝突することも増え、お互い何で衝突しているのかも、もはや分からないような状態でした。
Co:「学校の方はどう?最近何かいいことあった?」
Bさん:「特にないけど、この前テストで結構いい点を取ったくらいかな・・・(不機嫌な表情)」
Co:「そうなんだぁ。それは頑張ったね。じゃあ、何か悪いことはあった?ケンカしたとか、誰かに怒られたとか。
Bさん:「友達とケンカはしょっちゅうだし、親にはいつも怒られてます。(笑いながら)」
Co:「そうなの~?それは大変だね。先生一つ気が付いたことがあるんだけど、いいかな?Bさんは、いいことがあると不機嫌な顔をして、悪いことがあると笑うように見えたんだけど、自分ではそういうところ心当たりあるかな?」
Bさん:「・・・そういうとこあると思う」
Co:「そっかぁ。もしかしたら、そこが人に誤解されやすいのかもしれないね。Bさんが、嬉しいときに怒って悲しいときに笑っていたら、みんなBさんが何を考えているのかよく分からなくなっちゃうかもしれないよ。もし、そうだとしたらもったいないよね」
Bさん:「そうだったのかな~?・・・」
このような会話を重ねる中で、Bさんは自分の会話のクセに気が付き、「なぜそうなったのか」を理解し、「素直に表現してもいいんだ」ということを学んで行きました。
その後、自然な表情が増えて、声のトーンも上がり、自分のことを話そうとする様子が多く見られるようになりました。
「この人は自分のことを分かってくれているから大丈夫だ」という安心が伝わってきました。
自分を理解してくれる人との出会い
皆さんは、自分を理解してくれた人に出会った経験はありますか?
自分でも気が付いていない特性・個性、考え方やクセなどを、あるとき周囲の人から
- 「あなたって、こんなところがあるよね」
- 「こんな風に考えるよね」
- 「こういうタイプじゃない?」
と指摘され、それを理解してくれたら、どう感じるでしょうか。
私達は、たくさんの子ども達と接する中で「この子が何を考えていて、何を思っているのか」をできる限り汲み取って、言葉にして伝えるように心掛けています。
子ども自身が理解していなかった特性・個性を見つけ、理解しようと努め、本人が苦しむようならば修正し、適切な方向へ伸ばすお手伝いをします。
そして、親御さんとの面談の中で、子どもの気持ち・思考・傾向・特性などを通訳して、親子間のパイプのつまりを取り除いて、家族にとって最良の方向を一緒に探して行くのです。
親御さんも、子どもの特性を知って初めて見えてくるものがあり、改めて子どもと向き合う中で
- 「あ~、だからこんなことしたんだ」
- 「こんな風に考えていたんだ」
- 「この行動にはそんな意図があったのね」
といろいろなことが腑に落ちてゆくようです。
また、
- 「よく分からなくて叱ってしまったけど、後で子どもの気持ちが分かって後悔した」
- 「もっとよく理解してあげていれば、こんな結果にはならなかったのに・・・」
と思ったこと、自分を責めたことはありませんか?
最初は単なるミスコミュニケーションから始まった親子関係のねじれが、無理を強いた結果徐々にこじれていくというケースは意外と多いのです。
何より子どものことを理解している存在が近くにいるということが、安心につながっているようで、心に余裕を持って思春期の子どもと向き合うことができるようになります。
「困ったときは、あの先生のところへ相談に行けばいい」と。
分からないことと不安だらけで、正しい解答なんて存在しない子育ての真っ最中において、お父さん・お母さんを守り、支えていくために、この「安心感」が必要なのだと思います。
単回でも大丈夫なので、一度面接を通して、子どもを理解してくれる専門家とつながりを持っておくことは、おやこ間の良好な関係を維持する上でも役に立つと思われます。
お父さん・お母さん達が安心して、のびのびと子育てに取り組めるよう、おやこ心理相談室としても、これからも一人でも多くの子どもたち・大人たちの心を理解できるように、日々努めて参ります。
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