「ああしなさい、こうしなさい」と言われれば動くけれど、指示がなければ自分からは自発的に動こうとしない。そのような子ども達は「指示待ち」の子と言われていて、年代問わず、比較的多く見受けられます。
指示待ちの子どもたちは、自分から「こうしよう。ああしよう」という積極性に乏しく、自発性が欠けてしまっています。そして、とても依存的です。
どうしてそのようなこころの状態になってしまうのか見ていくことにしましょう。
ここでは、A子(10歳)という女の子の例を挙げたいと思います。
指示待ちのA子さん
A子の母親は、子育てが生活の全てと言っても過言ではないような専業主婦です。とてもよく気が付くし、A子が何かしたいと思うと、すぐにそのことに気づいて、「こうしたいのね。ああしたいのね」と、それをすぐに口に出し、A子の気持ちを先取りしてきました。
この母親の先取りが、もう当たり前になってしまったA子は、自分が意思表示をする代わりに、母親にそれを悟ってもらうことが当然になっていました。
実は、A子は幼い頃からピアノ・水泳・英語・体操と様々な習い事をしています。母親はA子の将来を心配し、早い段階に、できるだけ色々な経験をさせてあげようと必死でした。
一方、A子はいっこうに自分にとって重要な習い事だという気持ちがありません。
母親に「ほら、塾の時間よ!早く準備しなさい!」と言われないと行動に移すことができないのです。
すべてに対して母親の先取りが徹底しているため、A子は母親の言葉を耳にしないと自分の気持ちがはっきりしたものにならず、指示がないと動き出さない、そうしたロボット的なこころの持ち主になってしまったのです。
こういった「指示待ち」の子の特徴の一つに、すぐに他人の責任にするというものがあります。自分の意志や考えは、すべて母親や周囲が先取りして表示してしまうため、ひとたび困難や問題が起きた時に「別に私が決めたことじゃないし!」とすぐに責任転換してしまうのです。
そして何事も自分事として考えられないので、常に不平不満を口にしているという特徴もあります。これではいつまでたっても、自発性が育ちようにありません。
自分がやらないと、どうにもならない・・・
このような「指示待ち」の子どもに対する接し方のコツは、まず子どもが自分から何かをやりたいというニーズが起こる、そういう場面をつくることです。
自分からやらなかったらどうしても困る。そういう現実に出会うことが、子どもが自分を発揮するためには必要な条件なのです。「自分でやらなかったらどうにもならない」、そういう現実に出会った時、初めて子どもは自分の力を発揮します。
要は、母親としての忍耐力が試されるわけですね(子どもの力を信じられることにもつながります)。
そして、一度そういう状況で自分らしさというものを実感したときには、それ以降、自分の自発的な意欲や意思を大いに発揮するようになります。
「指示待ち」の子ども達は、多くの場合、自分から積極的にやらないために、「ダメな子ね」とか、「意気地がない」とか、「怠けている」とか、「無気力だ」とか、いろいろなレッテルを張られてしまったり、非難を浴びせられています。その結果、ますますいじけたり、ひがんだり、自信を失ってしまうのです。
まず、彼らのコンプレックスをやわらげ、「自分にも出来るんだ!自分もやらなくちゃ!」という自発的な意欲が発揮されるような、そして、また、自信を回復できるような母親(周囲)の関わりが必要になってくるのです。
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