私が臨床心理学を本格的に学び始めた大学院時代、「家族療法」という授業を履修していた際に、繰り返し先生に叩き込まれた“家族システム論”という概念があります。
この理論は今でも臨床の現場でとても役に立っている理論の一つでもあります。
そもそも「家族」は、親・子・祖父母それぞれがある役割を担っていて、お互いにバランスを取り合いながら「家族」を作っているという考え方です。
この理論をもとに考えると、子どもは親たちの作った「家」というシステムの中で生きているので、彼らの行動のほとんどすべては、システム維持の機能を持っています。
例えば、親たちの間の緊張や不仲はシステム崩壊のサインとして、すぐさま子どもに感知されます。
その時、子どもたちは、色々な表明の仕方で、システムを維持しようとする態度(役割)をみせます。
「家族」と「システム?」と似ても似つかない言葉に思われるかもしれませんが、簡単に言えば、家族がバラバラになってしまわないように、子どもは必死にそれぞれの役割を演じているということです。
この態度(役割)には、大きく5つのタイプがあると言われています。
今回はその中の1つである、「ファミリーヒーロー」をご紹介したいと思います。
ファミリーヒーロー:
このタイプは、常に家族の中で正しいことを言い、正しいことをして家族を引っ張る役割です。
彼らの中には、成績のいい子、スポーツや音楽のできる子など、世間に高い評価を得られそうな子どもがいます。
世間に自慢できそうな子どもがいると、両親の注目は、自然とこの子に集中します。
集中している内は、両親の仲の悪さが忘れられ、この子の活躍に家族が一丸となれるので、期待を背負った子どもはますます頑張っていくことになります。
なぜならば、自分が頑張っている間は、家族がバラバラにならずにすむと信じているからです。
彼らの多くは、「もし自分がやらなければ、誰もやらない。自分がやらなければ、何か悪いことが起きる・・・」という強い信念を持っています。
ですから「強迫的よい子症候群」みたいになってしまうのが特徴です。また、勝ち負け指向もとても強くなり、自分にも他人にも厳しい面を持つことになります。
このタイプの課題:
このタイプの課題は、まず、失敗を受け入れることができるようになることです。
このタイプは、自分にも厳しいですが、周りにも厳しい所があるので、人間関係が非常にぎすぎすしたものになりやすい所があります。
しかし、自分の失敗も他人の失敗も受け入れられるようになるとより穏やかな人間関係を築いていくことができるようになります。
また、他人の分まで余計な責任を取りたがる癖もあるので、自分のことだけ責任を持つように心掛けることも大切です。
今回紹介した「ファミリーヒーロー」も次回から紹介する他の役割も全て、自分の気持ちや都合ではなく、家の中の雰囲気(緊張感や緊迫感など)、母親の顔色、父親のご機嫌などを優先して考えてしまうことで、生きづらさを抱えることになります。
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