皆さん、こんにちは。
おやこ心理相談室には、日々たくさんのご相談者様が来談されます。
たくさんの方とお話をする中で実感していることの一つに、『話を聞いてもらうという体験』の少なさがあります。
これは大人も子どもも共通しています。もしかしたら、誰もが忙しく余裕のない現代特有の社会的な病理と言ってもいいのかもしれません。
スクールカウンセラーとしての役割
スクールカウンセラーとして赴任する学校の中には、生徒の全員面接を行うところがあります。
時間が限られている中で全員の面接となると、一人当たりの面接時間はとても少ないのですが、それでも面接を終えた後の子どもたちは笑顔でクラスに戻ってくると先生は仰ってくれます。
ほんの少しでも、誰かに話を聞いてもらったという体験があれば「誰かに話をしてもいいんだ」、「困ったときは人を頼っていいんだ」という感覚を育てることができ、そしてお返しに「誰かに相談されたときはじっくり話を聞いてあげよう」という優しさへとつながると思います。
人間関係を築くうえで、この「話を聞いてもらった」という体験がとても重要なのです。
全員面接を通して、お互いを思いやる優しさが少しでも育ってくれることを願っています。
話ができない子どもたち・話が聞けない大人たち
大人同様、子どもたちも心の中に色々なものを抱えて生きています。
嬉しいことや、楽しいこと、好きなことなどのポジティブ感情から、嫌なことや、つらいこと、怖いこと、苦手なことなどのネガティブ感情まで。
感情は自分の外に出すことで、昇華させることができるのですが、これらの感情を家庭の中で素直に打ち明けられている子はそう多くはないように思います。
特に、ネガティブな感情は吐き出せないまま抱え込んでいるというケースが多いようです。
そして、そのまま抱え続けて、体調に異変をきたすことも少なくありません。
しかし、お父さん・お母さんへ「子どもの話を聞いてあげてください」というメッセージを一方的に出しても、お父さん・お母さん自身に「話をきいてもらった」という体験がなければ、子どもの話を十分に聞くことは難しいのです。
お父さん・お母さん達もまた「誰にも相談できない」という葛藤を抱えていることもしばしばあります。
それは、世間体や高いプライドからくることもありますし、親たるもの「誰にも頼れない。頼ってはいけない」と信じている場合もあります。
大人になると、様々なことが複雑になり、悩みや苦しさを感じることが増えます。
それは情緒が成熟し、人生がより豊かになったという証拠でもあるのですが、ネガティブな現象をポジティブに受け取ることはそう簡単なことではありません。
それでも一人で何とかしようと奮闘している大人がたくさんいます。
そうやって自分の悩みを自分で何とかしようと頑張っている親の前では、子どもたちが簡単に悩みを打ち明けられることはまずありません。
人を頼れる力は、生き抜く力
困った時は、もっとシンプルに人を頼ってみてもいいのではないでしょうか。
まずは、お父さん・お母さん自身が、じっくりと話を聞いてもらう体験が必要なのかもしれません。
それで初めて、子どもや他人の悩みを聞くことができるようになるのだと思います。
おやこ心理相談室のカウンセリングでは、来談された方のお話を徹底的に聞かせていただきます。
これを、専門用語で「精神分析的アプローチ」と言います。
こちらから何かを指示するアプローチではありません。
その方のお話の中には、その方の生きてこられた足跡、その人なりの考え方や思いがあり、それを理解することを心掛けています。
あなたが抱えている感情は、あなただけのものです。どんな感情も誰かに否定されるものではありません。
「カウンセリングに行ってみたいけど…」と思って、何か月も検討している方も中にはいらっしゃることでしょう。
確かに「カウンセリングに行く」ということは、敷居が高く、とても勇気のいることだと思います。
勇気を出して来談された方の中には、これまで「誰にも相談できなかった」想いを、涙ながらに語ってくれる人は少なくありません。大人でも子どもでも同じです。
私たちは、そんな想いに寄り添い、昇華させるお手伝いをさせていただきます。
そして、その後に、今度は彼ら・彼女たちが意識せずともよい聴き手となって、また周囲の人たちを幸せにしていく、そんなループが増えていくことを願っています。
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- カタルシス, スクールカウンセラー, 傾聴, 昇華, 精神分析的心理療法
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