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皆さん、こんにちは。
いつもおやこ心理相談室をご利用いただき、ありがとうございます。

世の中には、「人に嫌われたくない」と思っている人がたくさんいますが、これらの人たちの話を聞いていると、人に嫌われたくないという強い思いとは裏腹に、どんどん人が離れていくという現象が生じているパターンが多いように思えます。

これは家庭内でも同じことが当てはまります。

夫・妻や子ども、両親や義理の家族など、家族のメンバーに対しても「嫌われたくない」という思いから必要以上にアレコレやりすぎてしまい、逆に関係がギクシャクしてしまうことはよくあります。

「子どもに嫌われたくない」とか「義理の両親に好かれたい」など、「人に嫌われたくない」という思いを抱くこと自体は、自然なことだと思います。

しかし、この思いが真逆の効果を生んでいるとしたら?…ちょっともったいないですよね。

もしかしたら、思い当たる節がある方もいるかもしれませんが、今回はこの現象を紐解いてみたいと思います。

☘ Aさんのケース

中学生のAさんは、「友人関係がよくわからない。友達といるとすごく疲れる」という人間関係の悩みがありました。

Aさんは、「よく、わからない…」と「私には無理(苦笑)」が口ぐせで、これまでは自分で決断することはなるべく避け、誰かに合わせる形でその場を切り抜けてきました

家族や周囲の人が、「〇〇に行こうよ」とAさんを誘うと、とりあえずその場の雰囲気で他人に合わせて「…みんなが行くなら行く」というような、あいまいな返事をします。

誰かと意見が食い違うことで、その場の雰囲気を悪くしたり、人間関係において波風を立てたりすることはなるべく避けたいと思っていて、そのためなら自分が我慢をしてもいいと考えていました。

その結果、「行きたくないけど行く」、「やりたくないけどやる」というのが当たり前の日常です。

ラインに至っても、即答することを避け誰かの返信を待つか、既読スルーや未読ということもしょっちゅうです。

こんなことが続くうちに、周囲の人はAさんの本当の意見や気持ちがわからなくなってしまい、どんどん不安になっていきます。

また、Aさんが相手によってコロコロと意見を変えているように見えるので、周囲にはウソつきや八方美人のように映ってしまい、信頼感を保つことが難しくなっていきます。

そして最終的に、人が離れていくという現象が起きてしまい、友人関係が続かなかったのです。

特に、学生生活においては、クラス替えや進学などのタイミングで友達関係が簡単に変化してしまうので、いつまでたっても親しい友人ができません

そのまま大人になって、「親友」と呼べるような存在がおらず、深く長く友人と付き合った経験がない人はたくさんいます
(こういう人は、人間関係や家族関係で多大な我慢を強いられているか、何かしらの問題を抱えている可能性が高いです。)

☘ Aさんの心理

では、Aさんは、最初から「人と離れたい」と望んでいたのでしょうか?

実は、Aさんのこのような行動の裏には、真逆の感情、つまり「みんなと仲良くしたい、人に嫌われたくない」という強い思いが隠れていたのです。

この思いが強すぎて、逆の結果につながってしまっていたのです。

Aさんは、自己肯定感が低く、自分に自信がないので、いつも人の顔色を伺っています。

人に嫌われないように必死になるあまり、自分の意見や気持ちを押し殺し、相手の意見を優先させてきたのです。

つまり、「自分より相手が大事(I’m not OK. You are OK.)」という状態でした。

それは、Aさんなりの相手を傷つけない・相手を尊重するやり方でしたが、相手からしてみるとそうは映りませんでした。

そのすれ違いを埋めあえればよかったのですが、学生時代のAさんやその友人たちはそれができるほど大人ではなかったので、結果的に関係が続かなくなってしまったのです。

ラインに至っては、「私なんて返信しないでも誰も気にしないだろう」とか「私が意見を言うとみんなに迷惑だから」などという思いから、未読や既読スルーしていたようです。

Aさんの気持ちを知れば、これらの行動の理解はできますが、結果だけ見ると、すべて逆効果ですね。

相手に嫌われたくないという思いが強すぎて嫌われてしまう…
相手を傷つけたくないという思いが強すぎて相手を傷つけてしまう…

なんとも皮肉的でやるせない気持ちになるパラドックスです。

このやるせないパラドックスがもとになり、関係をこじらせてしまったご家庭をたくさん見てきました。

どのケースも根っこには愛情があることは間違いないのですが、その愛情が結果的に誰かを苦しめてしまうのは、もったいないですよね。

☘ 人に嫌われたくないという人の心理

では、「人に嫌われたくない」という人の深層心理を紐解いてみましょう。

低い自己肯定感 

自分に自信がないので、自分の意見や感情を言うことははばかられ、他人の意見を優先させる。言い換えれば、他人の評価に依存している状態。また、みんなのためになるのなら、自分だけ我慢すればいいと思っている。

強い承認欲求

他人の評価に依存しているので、他人から良い評価をされないと自分には価値がないと思い込んでいる。みんなに承認されたいので、みんなにYESを言い、いい顔をする。

孤独になりたくない

孤独が怖いので、常に誰かと行動を共にしていたい。一人になりたくない(周囲に“ボッチ“だと思われたくない)ので「〇〇友」のような存在はたくさんいるが、心の中では友達だと思ったことはなく、常に孤独

自己中心的

表向きは相手に合わせてばかりいるが、実際は「自分はできない」「自分には無理」「自分には…」と自分のことばかり考えている。「相手がどう思うか」とか「相手がいることだから」とは考えられず、自己中心的で身勝手な発想をする。

プライドが高い

プライドが高いので、「人に嫌われている」ことに耐えられない。その状況を打開しようと、あれこれ無理をして疲れるが、なんせプライドが高いので、無理している・疲れていることすらも認められない

このような心理が複雑に絡まって、自分のことをそのままでいいとは感じられず、自然体ではなく、常に無理して人と関わることになります。

☘ 打開する方法とは

この状況を打開するためには、まずAさん自身が「自分のことを大事にする」ということを学ばなければなりません。

そして、「相手を大事にすることと自分を大事にすることは同じくらい大切(I’m OK. You are OK.)」と思えるようになる必要があるのです。

自分を大切にすることができないままだと、自分を大切にできない相手と引き寄せあってしまい、いつまでたっても自分を大切にすることができないままです。
(ホスト依存や恋愛依存・ダメンズコレクター、またストーカー被害者・加害者などの心理にも通じています。)

簡単なことのように見えるかもしれませんが、この思い込みを変えるという作業は案外難しく、時間も労力もかかります。

現在、Aさんはカウンセリングの中で、自分を大事にするトレーニングをしています

友人に気持ちを伝えることができる日も遠からず訪れそうです。

「優柔不断で自分の意見がない、意見があっても言わない(言えない)」という指示待ちの子どもが増えている背景を考えると、自分を大切にすることができない(分からない)子どもたちもまた増えているのだと憂慮します。

(家庭においては、子どもたちは、Mom is OK. I’m not OK.と考えているので、自分の意見を言わないことが多いようです。)

Aさんのように「人に相談できた・人を頼ることができた」ことは、それだけで自分を大切にできたという証拠で、とても勇気のある価値ある一歩です。

このコラムを読んで頑張ってみたけど、現状が変わらないという場合、または、子どもに自分の意志を持ってほしいと望んでいる場合は、是非、おやこ心理相談室を思い出していただけると幸いです。

いつでもお待ちしています。

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