皆さん、こんにちは。
いじめが増えるのは小学校高学年から中学校の間ですが、その後もいじめられたという強烈な記憶に苦しみ続ける子どもたちは少なくありません。
いじめを受けたときの気持ちを汲み取り、少しでも心の傷を癒せるような親でありたいと願うのは、親として当然の願いではないでしょうか。
シリーズ第8回は『親の対応でいじめ問題を乗り切った実際のケース』をご紹介します。
ケース1: 中学生男子A君
A君は学校で数人のクラスメイトからいじめや嫌がらせを受けていましたが、それを誰にも言えずに一人で抱えて苦しい思いをしていました。
バレたらもっといじめられるかもしれないという恐怖で、外では平気な自分を演じてやり過ごしていましたが、心の中では不安と恐怖に押しつぶされそうになっていました。
必然的に家でもいじめのことが頭から離れなくなっていたので、元気がなくなり、何も手につかないような状態で、言葉数も減り「学校に行きたくない」と訴え始めたのでした。
お母さんは、A君の様子から「いじめられているのかも?」と感じ取りましたが、A君は理由を教えてくれませんでした。
なぜなら、A君は心の中で「誰にも迷惑をかけたくない」と思っていたのです。
そこで、お母さんは無理に聞き出そうとはぜず、家族で相談しA君の同意を得た上で、学校に連絡をして、とりあえず当分の間学校を休ませることを伝えました。
その間に、A君を連れて外部の相談室にカウンセリングに行くことを決めました。
A君の家族がスクールカウンセラーではなく外部の相談室を選んだのは、学校とは離れていて、学校の関係者がいないことが安心に思えたからだそうです。
外部のカウンセリングに行くことに抵抗と不安はありましたが、勇気を出して、家族で一歩を踏み出しました。
そこでA君は今まで一人で抱えてきた辛さをカウンセラーに伝えることができ、苦しさからようやく解放されました。
同時に、ご家族もカウンセラーからの心理教育を受ける中で、A君の声にならない気持ちを知ることができ、A君が求めている対応を学び、実行することができました。
ご両親がいじめに気付いたこと、すぐに学校を休ませたこと、子どもの気持ちを尊重しつつ心のケアができたことで、いじめを乗り越えることができました。
日頃から子どもをよく見ているという習慣が、早期発見・早期対応につながったケースです。
ケース2: 中学生女子Bさん
中学生のBさんは男子から容姿のことでひどいことを言われたり、暴言・暴力を振るわれたり、女子のグループからも無視されたりとひどいいじめにあって、不登校になっていました。
人の目が怖くなり、昼間は外に出ることもできず、夜になると恐怖体験がフラッシュバックしてきて涙が止まらなくなるような毎日でした。
見かねたご両親がBさんに訳を聞いて、いじめが発覚しました。
すぐに、お母さんが学校に連絡し、スクールカウンセラーとつながることが出来ました。
Bさん本人はとても学校へ行ける状態ではなかったので、お母さんが一人でカウンセリングに行き、対応や今後の見通しを相談し、カウンセリングを受け続けました。
最初はお母さんの中にも「私が一人でカウンセリングに行くだけで、意味があるのか?」という疑問がありましたが、カウンセリングの中で、お母さんはBさんの心の状態を知り、家庭でのBさんへの対応を学ぶことができました。
お母さんが素早く適切に対応できたことで、Bさんは家庭で安心してゆっくり休むことができ、気持ちを整理することができるようになりました。
また、学校側もスクールカウンセラーと情報を共有しながら、様々な対策を取ってくれていました。
お母さんが学校とのつながりを維持しながら、粘り強くサポートしたおかげで、Bさんは保健室登校ができるようになりました。
Bさんが受けた心の深い傷が癒えるのには、さらに長く時間がかかることでしょうが、Bさんはご家族の理解と協力のおかげで、少しずつ笑顔を取り戻せるようになりました。
ケース3: 小学5年生女子
最後は、母親との会話の中でいじめをリフレイム(再枠付け)して、乗り越えたケースです。
母親:「最近、元気がないけど、学校で何かあったの?」
子ども:「う~ん・・・。○○ちゃんたちが仲間に入れてくれなかったり、私の方を見てコソコソしゃべってたり、無視したり・・・。」
母親:「そっかぁ。そんなことがあったのね。それで、あなたはどう思ったの?」
子ども:「すっごくいやな気分・・・悲しいし・・・」
母親:「それは、そうよね。ママだってそんなことされたら、いやだし、悲しい。あなたがされているって聞くだけでも、いやな気分だわ」
子ども:「それでさ、私が「やめてよ。どうしてそんなことするの?」って聞いても何も答えてくれないし・・・」
母親:「そうなんだ。ちゃんと「やめて」って言えてすごいじゃん。自分の気持ちが言えたあなたは100点よ。後は相手の問題。でもさ、そんなことするなんて、その子達は、よっぽど自分を大切にできないのね」
子ども:「どういうこと?」
母親:「自分を大切にできないから、他の人も大切にできないのよ。人のことをいじめても平気なのは、自分もそうされて当然だと思ってるからじゃないかな?ママは、人をいじめるって、「はい!私は自分を大切にできません!」って言ってるようなものだと思うし、恥ずかしいと思うな~。」
子ども:「そっか。そう言われてみれば、そうかも。それって、恥ずかしいよね」
母親:「ね~。だから、自分を大切にしている人を見ると、理解できないし、うらやましいし、意地悪したくなっちゃうのかもね。でもそれって、あなたが「自分を大切にできる素敵な人」だからでしょ?ママは、あなたはそのままでいいと思うな。あなたがそのままでいることが、彼女たちにとっては一番おもしろくないんだから」
子ども:「そっか。私は私のままでいいんだ。分かった!そのままでいるよ」
母親:「うんうん。また、何かされていやな気分になったらすぐ教えてね。次はママもパパもみんな一緒に考えるから。どうしてもつらいときはすぐに逃げていいからね。一人で頑張りすぎないでね。」
子ども:「うん」
これだけしっかりと親子の会話ができていれば、どんな問題が起きても乗り越えられるでしょう。
上記に挙げたいずれのケースも、
- 実際に学校を休ませる、不登校になったことを咎めない、もしくは保健室へ行くなど、「逃げてもいい」というメッセージを含んでいる。
- 子どもを責めていない。
- いじめを子ども一人の問題ではなく、家族全体の問題として受け止め、みんなで考えようという姿勢を持っている。
家族だけではどうしょうもできない場合は、勇気を出して専門家を頼ることも検討しましょう。
日頃から子ども達へ興味と関心を
いじめ問題の対策として、親ができることはたくさんあります。
大事なのは、そのときに上手く対応しようとすることよりも、日頃から「お父さんやお母さんがいるから大丈夫だ、お前はそのままでいいんだ」というメッセージを浴びせ続けることだと思います。
このメッセージが子どもたちを守るシールド(盾)となり、外の世界で役に立つのです。
「いじめはいつどこで起きてもおかしくない」というスタンスを持ち、日頃から子ども達の様子に興味を持って、たくさん話を聞いておくことが一番のいじめ対策だと思います。
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