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皆さん、こんにちは。
いつもおやこ心理相談室をご利用いただき、ありがとうございます。
☘ 子どもの自立は「うれしいはず」なのに感じる違和感!?
お子さんが進学や就職により、新生活が始まり家を離れた、家にいる時間が少なくなってきた、という親御さん達もいらっしゃると思います。
子どもが成長し、少しずつ手を離れていくことは、本来とても自然な成長のプロセスです。
遅かれ早かれ、子どもたちは巣立ちを迎え、自分の力で歩んでいくことを学ばなければなりません。
親の手を離れていく姿は「ちゃんと育っている証拠」として、周囲からは「よかったね」「楽になるね」といった言葉をかけられることも少なくありません。
けれど、その言葉とは裏腹に、母親の内側にはうまく説明できない感情が残ることがあります。
「うれしいはずなのに、さみしい」
「家事の負担が減って楽になったのに、どこか落ち着かない」
「ちゃんと育っていると分かっているのに、心が追いつかない」
このように、喜び・寂しさ・戸惑いといった感情が同時に存在する状態は、決して珍しいものではありません。
むしろ子どもの自立が進む時期ほど、母親の内面では感情の揺れが起こりやすくなります。
空っぽになった子ども部屋を見ると、心にぽっかりと穴が開いたように感じたり。
子どもが小さかった頃のことを思い出しては、胸が苦しくなったり。
今までは「一人になりたい」と思っていたのに、いざ一人になると逆に孤独に耐えられず、誰か(旦那さん)と一緒でないと行動できなくなってしまったり。
あんなに手がかかっていた存在が突然家を離れたら、さみしく思うのは当然のことです。
これらの変化は、「お母さんの心が弱くなった」のではなく、役割の変化に心が順応しようとしている自然な反応なのです。
☘ 空の巣症候群(エンプティネスト症候群)とは?
こうした子どもの独立に伴う心理的な変化は、「空の巣症候群(エンプティネスト症候群)」と呼ばれることがあります。
これは、子どもが家を離れたあとに感じる喪失感や空虚感、気力の低下など、心理的な反応の総称です。
ただし、医学的な意味での「病気」というよりも、人生の転換期に起こりうる“適応の過程”として理解されるものです。
症状としては、
- ふとしたときに感じるさみしさ
- 自分が空っぽになったように感じる空虚感
- 物事に対する無気力感
- 時間はあるのに“何をしていいか分からない”感覚
- 自分の役割が急になくなったような無力感
などです。
すべての親御さん(母親)に同じように起こるわけではありません。
子どもとの関係性や、これまでの生活の重心の置き方、自分自身の価値観によって、その現れ方には大きな個人差があります。
☘ 「空の巣症候群」になりやすい母親の特徴
空の巣症候群そのものは「特別な人だけに起こる状態」ではありませんが、同じような子どもの自立の場面にいても、その症状が強く出やすい人には、いくつかの共通した背景があります。
ここでは代表的な特徴を見ていきます。
- 長年「母親役」を頑張ってきた人
まずひとつ目は、長いあいだ「母親としての役割」に全力で向き合ってきた人です。
自分のことをすべて投げうって、子どもの生活を整え守り、学校や人間関係に気を配り、日々の細かな変化にも敏感に反応してきました。
しかし、「母親役」を頑張ってきた期間が長いほど、自分自身のための時間や欲求は後回しにされやすくなります。
その結果、子どもが手を離れたときに「自分が何をすればいいのか分からない」という感覚にさいなまれることがあります。
- 自分の欲求や感情を後回しにしてきた人
次に、日ごろから自分の本音や感情を押し込んできた場合です。
「今は子ども優先だから」「自分のことはあとでいい」といった選択を重ねることは、子育て期にはとても自然なことです。
しかし、それが長く続くと、自分の本当の気持ちに気づくことができなくなっていくことがあります。
「私は今、何をしたいのか」「何が好きなのか」「今何を感じているのか」といった感覚が鈍麻していき、自分でもうまく表現できない状態になることもあります。
- 「母親としての自分=自分」という同一化
三つ目は、「母親としての自分」と「自分自身」が強く重なっている状態です。
長いあいだ子育て中心の生活をしていると、「母親であること」が自分の存在意義のように感じられることがあります。
もちろん、それ自体は決して悪いことではありません。
むしろ、子育てをしている時期の生活としてはとても自然なあり方です。
しかし子どもが成長し、母親としての役割が少しずつ減っていくと、「母親でなくなる=自分が薄れていく」と感じてしまうことがあります。
本来は役割の変化であっても、内側では「自分そのものが失われていく喪失感」として受け取られてしまうのです。
☘ 子どもの成長=役割の喪失として感じられてしまう
これらの背景が重なると、子どもの成長は「喜ばしい変化」であると同時に、「役割の喪失」としても感じられやすくなります。
本来であれば、子どもが自立していくことは関係の終わりではなく、新しい関係性のスタートです。
しかし母親側の内面では、支える役割が減ることが、そのまま自分の存在意義の減少のように感じられてしまうことがあります。
その結果、子どもの自立という現実と、自分の内側で起きている喪失感との間にギャップが生まれ、「説明できない空白」として悩み始めるようになります。
ただの「空の巣症候群」だと放置され、適切な対応が取れないと、うつ状態になったり、睡眠障害・摂食障害、希死念慮などの深刻な状態になることもあります。
中には、自分の中の虚無感・喪失感に耐えられず、無意識に子どもの自立を阻んでしまうという複雑なケースに発展してしまうこともあります。
親子の共依存や子どもの引きこもりなどの問題の裏に、母親が子どもを手放すことができないという心理状態が隠れていることは珍しくありません。
☘ 自分でできる対応
「空の巣症候群」の対応として、ご自身でもできる対策をいくつかご紹介します。
- 自分の本音を確認する作業
日頃から、自分の気持ちを見つけ、汲み取る練習をしておきましょう。「好き・嫌い・やりたい・やりたくない」など。今まで抑えてきた自分の本音に気が付くだけでも十分です。
- 人と気持ちを共有する「おしゃべり」の効用
「さみしい、心にぽっかり穴があいた」などの感情をだれかに話してみましょう。
人との「おしゃべり」には、気持ちを軽くする効用があります。これから一緒に過ごす時間が増えるパートナー(旦那さん)との関係を良くするためにも、夫婦での感情の共有はおすすめです。
- 「さみしくてもいい」さみしさは自然な感情
さみしさを無理して何とかしようとせず、「さみしくてもいい」とそのまま受け入れてみましょう。
- 自分の時間を楽しむ姿勢
簡単なことでも楽しもうとする意識をもってみましょう。趣味や運動、ボランティアなどを始めてみるのもいいですし、家の中でも簡単で楽しめそうなことを探してみるのもいいかもしれません。
大事なのは、人のためではなく「自分のためにやる」ことです。
☘ さいごに
「空の巣症候群」はいわば、お母さんが立派に子育てをやり遂げた証拠です。
そして、「精一杯子どもを愛してきた証拠」です。
しかし、「母親役」を頑張れば頑張るほど、子どもが自立した後に、母親自身が自分を見失い苦しい思いをするとしたら、やるせないですよね。
子どもが巣立ちを迎えるまでは、長いようであっという間です。
子育てに変化が見え始めてきたら、子離れの心の準備を整えるのと同時に、「母親」という役割からも卒業する意識を持ち始めるといいかもしれません。
子どものことをおろそかにしろとは言いませんが、お母さん自身が自分のことを大切にする作業も、子どもがスムーズに自立していくために、本当はとても大切なのです。
ただし、苦しい症状が長く続いている、日常生活に支障がある、自分ではどうにもならないと感じている場合は、お早めに医療機関や専門機関へご相談ください。
困ったときに誰かに頼ることもまた、「自分を大切にする」ことです。





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