保護者としての親
皆さん、こんにちは。
子ども達は無力な状態でこの世に生まれてきて、親の保護を受けながら成長していきます。
赤ちゃんのときは、自分で動くことも食べ物を口に運ぶこともできないので、生きていくためにはお母さん・お父さんの助けが必要不可欠です。
親は無力な我が子の唯一の表現方法である“泣く”ことから、彼らの訴えを必死で見極め、それに答えようとできる限りの努力をします。
赤ちゃんが泣き出すと、「お腹がすいているのかな?」「オムツがぬれているのかな?」「調子が悪いのかな?」といろいろな状況を想定し、対策を取って、赤ちゃんが気持ちよく過ごせるようにします。
この頃の親の役割はまさに、世話をして、保護をすることです。
保護が支配へ変わるとき!
しかし、子ども達はすごいスピードで成長し、赤ちゃんの頃に必要とした保護をすぐ必要としなくなる時期がきます。
自分で動けるようになり、食べられるようになり、とできることも日に日に増えていきます。
多くの親は、「一人で歩けるようになったね!」「自分でスプーンが使えたね!」と子ども達の成長を喜びます。
子ども達の成長を喜ぶ反面で、子どもの安全やしつけばかりに目が行って、いつまでも子どもが小さかった頃と同じような保護を続けようとする親もいます。
これは、人に迷惑をかけない「いい子」を育てたいという思い、そして自分自身も「いい親」でありたいという気持ちが強いからとも言えますが、その思いが強すぎて、子どもの成長に気がつけないでいると、子ども達は自由を奪われ、自立を妨げられることになりかねません。
いつまでも保護されて、親に先回りされて何でもやられていると、子ども達は「あなたは無力な存在なのよ」「何もできない子だ」「信頼して任せられない」という無意識のメッセージを受け取り続けて生活していくことになります。
このような状況では、子ども達は親の善意の保護に支配され、自分を確立させる事が出来ず、自分の意見も言えず、自信を持って外の世界へ踏み出してゆくことが出来なくなってしまいます。
このまま行くと、親の役割は「保護」から「支配」へと変わっていってしまうのです。
「支配」が生む病理?
保護が必要なくなった子ども達にとっては、親の過剰な保護・支配は、「大きなお世話」「一方的な押し付け」、さらには「迷惑」でしかありません。
その迷惑に「(私が)あなたのためを思ってやっているのよ!」「(私が)あなたを心配しているから」というメッセージを添えられると、子ども達は「自分のためにやってくれてるんだ」と自分の気持ちを我慢し、押し殺し、「やっぱり親は正しいんだ」「自分は無力なんだ」と自分を責める以外、もうどうすることもできません。
過剰な保護は行き過ぎると、「支配」となって子ども達を苦しめ、彼らはその支配から脱却しようといろいろな形でSOSを出し始めます。
思春期によくある摂食障害などは、「親からの支配」と「自分の支配欲」とのぶつかり合いの証拠です。
最初は無償の愛情から生まれた保護がいろいろな病理を生み、それすらも気が付かずにいると最終的に親に対する「憎しみ」へと変わっていくのです。
保護者からサポーターへ
子どもの成長とともに、親も親としての役割を柔軟に見直していく必要があります。
保育園や小学校に入学する頃から、子ども達は親から離れて社会生活を始めます。
それまでのような保護は必要なくなり、集団生活の中で自分の力でできることは自分でやるように求められます。
それでも子どものことを心配して、あれこれ先回りして手を出してしまう親がいますが、それは、親が今まで通り子どもを支配し続けることで、保護をすることからの充実感や満足感を得たいだけの自己満足に過ぎません。
この頃から、支配の割合を減らしていき、子どもを見守りながら、必要に応じて「援助」をする「サポーター」としての役割を意識しはじめましょう。
幼い子どもの訴えを見極めることができてきた優秀な保護者は、子どもの成長とともに子どもの訴えや自主性もしっかり受け止めることができる優秀なサポーターになれると思います。
子どもが幼い頃は保護者としてできる限りのことをしてください。
そして、子どもの成長と共に、親も保護者からサポーターへと成長して、今度はサポーターとしてできる限りのことをしていけばよいのです。
愛情のかけ方は同じ
「子どもを守ろう」、「いい子に育てよう」、「幸せになってほしい」と、親として最大限の努力をするという気持ち、愛情のかけ方に間違いはありません。
しかし、それは「子どものニーズが伴っている」という条件をクリアして初めて、適切に作用し始めるのです。
多くの親が「愛情を持って育てていること」「子どもの幸せを願っていること」に変わりは無いのですが、その気持ちが適切な形で子どもたちの心に届かずに、途中でねじれて、最終的に子どもたち、さらには家族を苦しめていく結果になるというケースをたくさん見てきました。
その都度、とてももったいない、やるせない思いでいっぱいになります。
一度、おやこ関係が「支配者」と「支配される者」の関係になっていないか、勇気を持って見直してみませんか。
当相談室では、おやこのねじれを見つけて、解きほぐすとともに、親の「子どもを支配してしまう」心理を丁寧に扱い、安心してサポーターへと成長していけるお手伝いをしています。
子どもにとっても、親にとっても、よりよい「おやこ関係」がきっと見つかると信じています。
【関連記事:『父と母の役割』『自立は依存があって成立する』『親の期待という呪縛』『母子カプセル化』】
コメント