皆さん、こんにちは。誰しも、親から何かしらの「期待」を感じながら成長していくものです。
ある母親は、自分が習いたくても習えなかったピアノを子どもに習わせようとしたり、小さい頃から医者になるようにレールを敷く親もいます。
子どもが自分自身で興味を持って取り組んでいる分には問題ありませんが、親が自分の趣味や価値観を一方的に押し付けてきたとき、子どもはとても弱いのです。
内心では、ピアノをやらなければ親に見捨てられてしまうと感じ、親の期待に一生懸命合わせてしまいます。
「偽りの自分」は心の病のルーツ
「問題を起こす子ども」の投稿でも取り上げましたが、親の期待に答えることに一所懸命になり過ぎることで、自分自身の欲望(「あれをしたい!これをしたい!」という純粋な気持ち)を見失い、「偽りの自己」という心の病の根源が出来上がってしまうのです。
「偽りの自己」というのは、簡単に言えば、親の顔色やご機嫌をうかがいすぎてしまい、自分が本当にやりたいことを我慢して、親の期待に答えようとする自己のことです。
親が子どもに対し、「期待」という圧力をかけ、親の価値観を押し付けたとき、子どもが思春期になると暴力という形で親に復讐を始めることが、しばしばあります。
よく見られるケースとしては、夫婦仲が悪く、夫婦間で情緒的なつながりがほとんどない仮面夫婦であったり、また父親がワーカホリックで、家族との関わりが薄い家庭においてです。
夫に向き合ってもらえない母親は、関心を夫から子どもに向き変え、子どもとの密着度を高めていきます。
父親と母親が仲良く夫婦をやっていれば、子どもは子どもで自分の世界をつくり、自然と親から離れていくことができるのですが、このような家庭では、母親が子どもにベッタリと関わり、その世界観に勝手に侵入してしまうのです(これを「共依存」と呼びます)。
おまえのためを思って言っているのよ!
経済的にも生活能力的にも無力な子どもの心に、親が踏み込むのはじつに簡単です。
「おまえのためを思っていっているのよ!」といいながら、自分の期待を押しつける。
自分が子どものために我慢して生きていることを見せて、子どもにも、自分のやりたいことを我慢して親の期待を読み取ってくれるように育てていきます。
これは愛情のフリをした他者コントロールです。
親にしてみれば、「勉強ができていい子だから、つい期待してかわいがっただけ」かもしれませんが、子どもにしてみればいい迷惑です。
他人の期待を読み取ることばかり上手になって、自分自身の欲望が分からなくなってしまった子どもは、何をやっていても、どこかウソっぽいと感じながら、喜びの少ない生涯を送ることになってしまいます。
何をやっていても、他人に左右されているように思えて、そんな自分に嫌気がさしてくるのです。
このように目に見えない形で子どもに投げかけられる「親の期待」は、「私の人生は親に侵入されている」という自覚がそれほどありません。
はた目には、子どものためを思って、ひたすら子どもにつくしている「愛情あふれる親」という風にうつっています。
子どもが限界を訴えるとき
子どもの方は、内心にたまった怒りはとても大きくても、その怒りをどこへ向けたらいいか分からず、抑うつ状態や無気力状態になってしまう場合もあります。
こういう子ども達が怒りを外へ向けるのは、何らかの挫折がキッカケになります。
学校の成績が上がらなくなったり、社会に出たら、世間の要求に応えきれなくなったりした時です。
そうして親に期待される自分を演じきれなくなって、でも自分自身のこともよくわからないという八方ふさがり状態になってしまいます。
そこで、暴れ始め、親に現実不可能な要求を次々と突き付けてくることも珍しくありません。
こうなってしまう前に、親自身が、自らの行動を振り返り、子どもに一方的な「期待」という呪縛を与えていないのか、是非一度点検しておきたいものです。
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